米FDA承認、がん新薬「キイトルーダ」の実力 がんの種類ではなく、遺伝子異変に着目
製造元である製薬大手のメルクはすでに、一部の進行性の肺がんや悪性黒色腫(メラノーマ)、膀胱がんの治療薬としてキイトルーダの発売を開始している。薬価は高く、1年当たりの費用は15万6000ドル(約1730万円)だ。
キイトルーダが標的とする遺伝子変異の有無を調べる検査もあり、費用は300~600ドルだ。
キイトルーダの効果が期待できるタイプの遺伝子変異を持っているのは、全がん患者のうちたった4%にすぎない。それでも米国だけで年に6万人に達すると研究チームは推測している。
一筋縄ではいかない免疫薬開発
これまで臨床の現場では、がんを発生部位で分類することが広く行われてきた。たとえば肺がんだとか、脳腫瘍というように。一方で、重要なのはがんを引き起こす遺伝子変異だ、との指摘はずっと以前からあった。専門家は当初、遺伝子変異に狙いを定めて薬を作れば、体のどこにできたがんでも治療できるようになると考えていた。
だが、がんはそう単純なものではないと、論文の著者の1人でジョンズ・ホプキンズ大学ブルームバーグ・キンメル研究所のドルー・パードル所長は言う。
たとえばメラノーマの半数の患者でみられる遺伝子変異は、ほかのがんではめったにみられないことが明らかになった。また、同じ変異が大腸がん患者の10%でみられることが判明したものの、メラノーマ患者に効く薬は他の部位のがんの患者には効かなかった。
「果てしない夢だった」と、パードルはため息をついた。
キイトルーダに関する研究は、それまでとは別のアプローチから生まれた。免疫系はがん細胞を異物だと認識し、破壊しようとする。だが、がんは細胞表面の目印となるタンパク質を隠して、免疫細胞から「見えなく 」してしまうことで攻撃をかわす。
キイトルーダは「PD-1ブロッカー」と呼ばれる新しいタイプの免疫治療薬だ。がん細胞の隠れみのを暴き、免疫系が発見・破壊できるようにする。