三峯神社の何が多くの人々を引き付けるのか 東京近郊のパワースポットが人気化した理由

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参道に立つ御眷属様(狼)の像(筆者撮影)

御眷属信仰とは、農作物を荒らす害獣とされた鹿や猪を獲物にする狼(山犬)を“神の使い”とする信仰だ。狼の護符を貸し出し、1年後に返却してもらい、また、新しい護符を貸し出すということが行われてきた。

狼は、“火”や“見知らぬ人”を見れば吠えることから、“火伏せ”“盗賊除け”にご利益ありとされるようになり、江戸城を含む、江戸の大半を消失した「明暦の大火(1657年)」の際、三峯山の護符が貼られていた家は燃えなかったという話が広まったことなどから、ますます信仰されるようになった。

西洋では“悪役”のイメージの狼が、日本では神の使いとされたという文化の違いが面白い。“送り狼”という言葉も、本来は、自分のテリトリーに入ってきた者を、安全に外に送り出すボディガードの意味だったという説もある。

さて、取材に訪れた7月下旬、夏休みシーズンとはいえ、平日にもかかわらず、駐車場は満車に近い状態だった。また、境内では比較的若い世代の人たちの姿を多く見かけた。社務所を訪れ、「にぎわっていますね」と山中さんに言うと、「当社を参詣される方は、年々増えていると思います。また、私が三峯神社に職を得た15~16年前は圧倒的にシニア層が多かったのですが、最近は、20代後半から40代前半くらいの比較的若い世代が増えています。SNSへの書き込みなどを見ると、“三峯神社へ行って癒やされた”というコメントが多く見られます。働き盛りの世代が、“癒やし”を求めて訪れているのではないでしょうか」と話す。

日常から離れた異世界に、癒やしを求めに来る人が多いのは間違いなさそうだが、三峯神社がにぎわうのには、ほかにも理由がある。

以下、“パワースポット”“氣守(きまもり)”というキーワードで見ていきたい。

なぜ「パワースポット」になったのか

三峯神社をネットで検索すると、“パワースポット”というキーワードがたくさん出てくる。パワースポットとされることも、三峯神社に多くの人が訪れる理由のひとつだろう。

人々がその場所にパワーを感じるからこそ、パワースポットといわれるのだろうが、これだけ騒がれるようになったきっかけは、何だったのだろうか。

「2008年に放送されたテレビ番組が、最初のきっかけだと思います。以前から当社にいらしていた超常現象研究家の秋山眞人さんが、番組内で紹介してくださいました。その後、世の中にパワースポットという概念が定着しはじめ、まずは、流行に敏感な若い女性向けファッション誌の取材が増え、次第にテレビ取材も入るようになりました。スピリチュアル女子大生CHIEちゃんが来たこともありましたね」

気になるのは、取材やロケはお断りという神社・仏閣も多い中で、三峯神社はパワースポットとして紹介されることに抵抗はなかったのだろうか。

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