コンビニ「年収300万円社員」は魅力的なのか 正社員になりたくない人が半数もいるワケ

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その理由を聞いてみると「自由な時間がなくなり、精神的に耐えられなかった」とのこと。もともと自由人で、気ままな旅をして世界を放浪。帰国してアルバイトで稼いで、おカネが貯まると旅に出ることを繰り返してきました。ところが正社員になると長期間の休暇など不可能。同僚が3日の有給休暇を申請したところ「店舗の状況がわかっていて申請するのですか?」と暗に「3日の有給は無理だから取り下げなさい」とプレッシャーをかけられてあきらめた現実を目の当たりにしました。

さらにアルバイトとして気ままに働いていたときには気がつかなかった、社内の人間関係にも巻き込まれる状態になり、この環境では働けないと感じて、辞表を出すことになってしまったようです。おそらく、正社員になることは二度とないと語ってくれました。

こうして、正社員を体験して、転身を後悔した人は少なくありません。確かにに先ほどのデータで正社員になりたい人は半数以上いると書きましたが、逆に正社員になりたくない人も半数近くいるのです。こうした正社員になって後悔した人の声も影響しているのかもしれません。加えて、今後時給が上昇していけば、正社員にはなりたくないと考える人がさらに増える可能性もあります。

もっと魅力的な条件が必要なのでは?

さて、冒頭のファミリーマートの事例では、正社員になる道が開かれることは、アルバイト人材の引き留めの手段とされていましたが、皆さんは効果的だと思いますか? 筆者は引き留めを行うためには正社員として働く、もっと魅力的な条件が必要だと思います。

たとえば、年収ベースで600万円以上得られる正社員への転身。これだったら魅力的に感じる人も多いでしょう。でも、正社員にならずに同様の処遇で働けるアルバイトはありえないでしょうか? そうしたワークスタイルが可能になれば、コンビニ業界で効果的な人材の引き留めになるはずです。

役割や責任は正社員並み、でも働き方は正社員よりフレキシブル。売り上げアップのための販促活動や新規のアルバイトの採用や育成まで責任をもってもいいかもしれません。もはやアルバイト(非正規社員)イコール正社員の補助的な業務という定義も時代遅れなのかもしれません。

ただ、こうした発想に企業はネガティブな意見をもつことでしょう。コンビニの店舗管理コストが上がり、商品の販売価格が上がる、それは避けたいから時給は据え置きたいと長く考えてきました。でも、このデフレ発想は打破するタイミングではないでしょうか? アルバイトも正社員並みの収入が得られる可能性を容認しないと(コンビニ業界を支える)人材の確保は今後立ち行かなくなるはずです。

高城 幸司 株式会社セレブレイン社長

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たかぎ こうじ / Kouji Takagi

1964年10月21日、東京都生まれ。1986年同志社大学文学部卒業後、リクルートに入社。6期トップセールスに輝き、社内で創業以来歴史に残る「伝説のトップセールスマン」と呼ばれる。また、当時の活躍を書いたビジネス書は10万部を超えるベストセラーとなった。1996年には日本初の独立/起業の情報誌『アントレ』を立ち上げ、事業部長、編集長を経験。その後、株式会社セレブレイン社長に就任。その他、講演活動やラジオパーソナリティとして多くのタレント・経営者との接点を広げている。著書に『トップ営業のフレームワーク 売るための行動パターンと仕組み化・習慣化』(東洋経済新報社刊)など。

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