雇うボス弁(所長弁護士)のほうも、独立されるよりは事務所にとどまってもらったほうが事務所全体で得られる報酬が減らないし、出て行かない弁護士にとっては自力で事務所を借りたり、事務職員を自力で雇い、教育する非効率さも回避できる。
10人以下の事務所所属の弁護士の人数は、10年前が88.52%で現在が86.62%とほとんど変わっていない。この10人以下の規模の大半がいわゆるマチ弁であり、マチ弁の中で事務所の人数構成が変化していると見ていい(下図参照)。
2000年代に入って、大規模事務所は大規模事務所同士の統合でより巨大化したが、それは大企業からの法務ニーズにワンストップで対応する、言い換えれば商売を根こそぎ取ってこようという目的だった。事務所が巨大化したから手足になる新人も大量に必要になり、大事務所による新人の大量採用ということも始まっている。
したがって、大事務所の弁護士数増加の要因と、小規模事務所の弁護士数増加の要因はまったく異なるのである。
弱者救済に邁進する人権派
このマチ弁族は極めて大ざっぱな分け方をすると、社会的弱者救済のために、わずかな報酬で献身的な弁護士活動を続ける、いわゆる人権派と言われる弁護士たちと、それ以外の弁護士たちに分けられる。
人権派の代表格は、医療訴訟で患者側の代理人を務める弁護士である。大規模な薬害被害の救済のための訴訟では、全国規模の弁護団を結成する。弁護団結成の音頭を取るのは患者側の医療訴訟の大家の弁護士で、その大家の弁護士をリスペクトする全国の弁護士が集い、情報を共有し、訴訟方針の統一を図って対応する。
投資詐欺、変額保険に代表される金融商品被害などで被害者側の代理人を務める弁護団も、その分野の大家の弁護士が音頭をとって全国規模の弁護団を結成する。
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