たとえば販売代金を約束手形で受け取り、その手形が期日に不渡りになったとしよう。この場合、約束手形は民間会社A社が、民間会社B社に、いついくら支払いますということを約束した、民と民の間の契約書にすぎない。
このため、公権力を使って相手方の資産に強制執行をかけるには、民と民の契約が実際に存在し、AがBに債務を負っていることを裁判所に認めてもらう必要がある。これが債務名義をとるという手続で、手形の債務名義取得はほぼ1回の裁判で済むので、機動性こそが弁護士としての差別化ポイントになる
最近は大企業も弁護士事務所の使い分けを徹底し、高い弁護士報酬を支払わないで済むようにしている。このため、専門性が高く、複雑で難しい事案は大事務所に高いフィーを払って依頼するが、機動性が求められ、最先端の法務知識を必要としない事案についてはマチ弁事務所を使う。安く、さっさと手際よく動けない大事務所は、こと日常的な企業法務となると役に立たない。
マチ弁はどうやって稼いでいるか
大事務所の弁護士が法廷に立つ機会があまりないのに対し、マチ弁は毎日が訴訟だから、法廷に於ける作法を知らない大事務所を追い出されてやむなく独立した若い弁護士が、慣れない中小企業法務で法廷に立つと、マチ弁にけちょんけちょんにやられてしまう。
中小企業や一部の大企業から1カ月に5万~6万円程度の顧問料をもらって安定収益を確保する一方で、会社の保有不動産の売却や、事業継承といった、単発でも比較的稼ぎが大きい事件の依頼も不定期ながら獲得していくという形が、人権派以外のマチ弁事務所の典型と言える。
こういった中小企業と一部の大企業の企業法務専念型のマチ弁事務所は立地もさまざまで、東京都内で言うなら、新橋や麹町などにある法曹ビルに事務所を構えている弁護士もいれば、賃料が少々高そうな丸の内界隈のビルに、小規模なスペースでしかもなぜか割安な賃料でちゃっかり入居している弁護士もいる。
おカネにならないことを承知で弱者救済に邁進している人権派の弁護士は、中小企業法務に割く時間が中小企業法務専念型の弁護士よりも少ないので、中小企業法務専念型の弁護士のほうが総じて経済的に余裕がある。
なお、この中小企業と一部の大企業の日常的な企業法務の需要は分厚いので、数十人規模の国内系の中規模事務所の収益基盤の一部にもなっている。
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