悪条件でも「喜んでOK」させる巧妙心理テク 「一人芝居」「安い借り」に気をつけよ
極端な例になると、「暑い中、汗をぬぐいながらしょっちゅう来てくれる」ということに「借り」を感じ、生命保険という、生涯トータルでは非常に高額な商品を買ってしまうといったケースも生じます。営業担当者のコミッションを考えればそのくらい本人にとって大した話ではないのですが、それが非常に大きな見返りとなって帰ってくるわけです。
狡猾な手口に付け込まれないための対処法
返報性は、社会的な生物である人間が、共同生活を営む中で長年育んできた感情です。受けた恩義に報いない人間は非難され、生活や活動がしにくくなります。
そうしたストレスを避けるように人間は幼少期より教育されますし、体験を積んで学んでいきます。また、現実にお返しをすると人間関係が円滑になることも学んでいきます。返報性は、普通の人間であれば基本的に持つ性向となっているのです。
とはいえ、いくつか処方箋となるヒントはあります。「返報性の原理」を知ることは大前提ですが、そのうえで2つの処方箋をご紹介します。
まず、「返すべき借り」と「返す必要のない借り」を峻別することが大事です。これはある程度の経験が必要ですが、意識するとある程度早くできるようになるものです。ポイントは、自分自身を客観的に、メタな視点で眺めてみることです。メタな視点とは、あたかも幽体離脱したもう1人の自分が、自分自身を眺めているといったイメージです。
「これは実は先方にとっては大した手間暇ではない」「これは自分のほうが何倍も過度にお返ししようとしている」などと自分を客観視できれば、狡猾なテクニックに翻弄されることは減ります。
相手が社内事情について言ってきて「貸し」を作ろうとしてきたら、それは基本的に無視するというのも効果的です。もちろん、ビジネス上の大事なパートナーで、本人や上司の人となり、相手の会社の事情をある程度わかっている場合や、ご近所付き合いなど深い関係にある場合、話は別です。
しかし、一消費者の立場に立った場合、売り手の営業担当者、特にそれほどの接触回数がない相手の社内事情の話はかなりの部分はフェイクです。
筆者自身、基本的にそのように判断することにしており、いまのところはそれでうまくいっていると感じています。そこまで大胆に割り切れないと感じる人も多いかもしれませんが、そこはリスク、リターンを意識したうえで、自己判断で対応いただければと思います。ただ、冷静な視点と健全な批判的精神が大事だという点は忘れないようにしてください。
今回は、返報性の怖さに焦点を当てましたが、適切に用いれば、味方を作り、人間関係を円滑にする武器ともなります。その際のカギは、最終的にウィン・ウィン(お互いのリターンが増える状況)の関係構築を意識することです。強力な刃の剣でもあるからこそ、その使い方は慎重にしたいものです。
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