悪条件でも「喜んでOK」させる巧妙心理テク 「一人芝居」「安い借り」に気をつけよ
この2つのケースの共通点は、「相手が譲歩してくれた」と夫や顧客が感じたという点です。そこに「借りを作ってしまった」という感情が働き、「その分、見返りを与えてもいいか」と思った点が重要なのです。
妻が譲ったようで、実は「1日でも引き受けてくれたらラッキー」と思って最初は過剰な要求をしてみた、という可能性もありますし、塾の例も、最初から塾側は1科目受講で御の字と思っており、譲ったふりをして期間3カ月からスタートさせることに成功したのかもしれません。
これは「ドア・イン・ザ・フェース」と呼ばれる、返報性を活用したテクニックで、交渉術やセールスの書籍でもよく紹介されるものです。
知らないとカモにされかねない、古典的なテクニック
あらためて、返報性の怖さについて確認しておきましょう。第一に、先述したように「借りが実体を持つ必要はない」ということが挙げられます。別の例として、たとえば営業担当者に以下のようなことを言われた方もいるのではないでしょうか。
これらはもちろん本当のことである可能性は否定できませんが、むしろ、営業担当者が「架空の貸し」を作るために一人芝居している可能性のほうが高いと思ったほうがいいでしょう。たとえばいちばん上の例であれば、そもそも遅く帰ったというのがうそだということです。
しかし仮にうそでも、そう言われると「相手に手間暇をかけさせてしまった」「余計な支出を強いてしまった」などと感じる人は一定比率いるものです。そうした人は、借りがある状態を解消したいため、たとえば追加のオプションなどを提示されると、必要性が低くてもつい買ってしまうというわけです。
返報性の怖さの第2に、しばしば借りとその見返りが釣り合わないような事態が生じる、という点があります。たとえば、営業担当者がタオルやマグカップなど、ちょっとした粗品を持ってきてくれるということはよくあるでしょう。製造原価を考えればほとんどタダのようなものです。
しかし、仮にタダのようなものでも何度もそれを持ってきてもらうと、やはり「借りがある。解消したい」という気持ちになる人はいます。貸しとそれに対する見返りは釣り合っている必要はなく、「貸し借り」のある状態が解消されることが大事なのです。
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