レッドソックスが日本企業にも人気なワケ 「ハイチュウ」や「ENEOS」の米国展開に一役

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森永製菓の「ハイチュウ」といえば、日本ではおなじみのお菓子だ。ハイチュウの場合、実はアメリカでは、大リーガーが野球の現場でビジネスチャンスを生み出した。ハイチュウを米国などの大リーガーに“輸出”したのは、2009年から2016年シーズンまでレッドソックスで中継ぎ投手としてプレーしていた田澤純一選手。森永製菓のハイチュウをブルペンで食べていた田澤選手からもらって、口にしてみた他の選手の間でも大好評となった。

「ハイチュウ」が全米展開にこぎ着けられた背景

たくさんの選手が欲しがるので、それに応えてあげているとすぐになくなってしまう。田澤選手は遠征先でわざわざハイチュウを買いに出掛けていたのだが、当初はロサンゼルスやニューヨークなど日系のスーパーがある都市でしか購入することができなかった。そこで、球団が米国森永に「まとめ買いしたい」と連絡。それならばと、米国森永が好意で球団にハイチュウを無償提供したことが、スポンサー契約のきっかけとなったのだ。

地元の人気球団レッドソックスとタッグを組むことで、これまでハイチュウになじみのなかったニューイングランドの人々の間でもその味が親しまれるようになり、商品の認知度は爆発的に向上。結果的に、ともに米ドラッグストアチェーン大手の「CVS」でのテスト販売、そして「ウォルグリーン」での全米展開が実現した。

2015年にスポンサー契約を締結したのが、ENEOS。レッドソックスとの最初の接点も同じく田澤選手だった。野球ファンはご存じかと思うが、「新日本石油ENEOS(現JX-ENEOS野球部)」は田澤選手がアマチュア時代に所属していたチーム。しかし、それはあくまでもきっかけであり、ENEOSにはアメリカでレッドソックスの力を借りて解決したい課題があったのだ。

ENEOSが主に扱っている商品はエンジンオイル。安心・安全なイメージが売り上げを左右するため、印象として「みんなが知っているブランド」であることも求められる。しかし、ニューイングランドでのENEOSの知名度はほぼゼロに等しかった。

日本では自動車の保有率が減少傾向にあるため、今後、アメリカ市場をどう攻めるかは非常に重要である。特に日本車が多く見られるニューイングランドは有望市場であり、ぜひとも開拓したいエリアだった。そこで、ご当地球団のレッドソックスとタッグを組むことにしたのだ。

知名度を上げるためには、まずENEOSのロゴを知ってもらうことが必要だ。そこで、フェンウェイパークのバックスクリーン右下に縦7.3メートル、横4.8メートルのロゴを掲示。ほかにもオープン戦で使用するジェットブルーパークの外野フェンス、ブルペン、インタビュー時の背景としてテレビなどに映り込むボードなどを使い、徹底的にロゴの露出を行った。

レッドソックス傘下の非営利組織とエネオスが組み、貧しい地域の学校でペンキを塗る活動をした(写真:ボストン・レッドソックス)

さらに、レッドソックス傘下の非営利組織「レッドソックス財団」のスタッフとENEOSの社員が、貧しい地域にある学校のペンキ塗りや医療サポートセンターでの子供のケアを一緒に行う取り組みも実施。

そしてENEOSのオイル交換所にはワールドチャンピオンのトロフィーを展示し、顧客が自由に記念撮影できる機会を提供した。

タッグを組んだENEOSとFSMは、このように球場外でもレッドソックスファンとENEOSの距離を徐々に縮める施策を矢継ぎ早に展開。地元の人々との多様な接点を作り出すことでENEOSの認知度向上やイメージアップを果たすことに成功した。

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