レッドソックスが日本企業にも人気なワケ 「ハイチュウ」や「ENEOS」の米国展開に一役
球団親会社であるFSGの歴史は、レッドソックスを買収する前年の2001年にさかのぼる。ヘンリー氏は、FSGの前身企業「ニューイングランド・スポーツ・ベンチャーズ」をこの年に設立、その後、買収したレッドソックス球団とフェンウェイパーク、ニューイングランドのスポーツ専門ケーブルテレビ局「NESN」の持ち株会社となり、2011年に現在の会社名に改称した。
その間、2004年には、レッドソックスとフェンウェイパークのスポンサーセールス(企業などのスポンサーを得るための営業活動)を担う子会社「フェンウェイ・スポーツ・マネジメント(FSM)」も設立。この会社は、前に例を挙げた日本企業など、レッドソックスのスポンサーになりたい企業との間で、窓口としての役割を担っている。
オンラインの施策は別だが、メジャーリーグの場合、チームの"リアル"のスポンサーシップ施策をフランチャイズエリアに限定している。そのため、当初はFSMがスポンサー企業の商品販促やブランドイメージ向上の施策を展開できるのは、レッドソックスのフランチャイズエリアである、ニューイングランドだけに限られていた。
しかし、その後、FSGは2007年に米国で高い人気を誇る自動車レース「NASCAR(ナスカー)」のチームに参画して「ラウシュ・フェンウェイ・レーシング」をスタート。FSMがそのスポンサーセールスを行うようになると、全米のNASCAR開催地でもイベントと連動した施策を打てるようになった。2010年には英サッカーチームのリバプールFCを買収し、活動範囲を欧州に、そして欧州サッカーの視聴者が多いアジアやアフリカを含む全世界に広げることに成功した。
もちろん、米国内での事業領域も着々と広げている。野球ではレッドソックスのほかにも、メジャーリーグのデジタルコンテンツを一括管理する「MLBアドバンストメディア」が、スポンサー獲得の営業活動を委託。バスケットボールではNBAのトップスターであるレブロン・ジェームス選手のコート外での活動、ゴルフでも松山英樹選手も出場したトーナメント「デル・テクノロジー」に関して、同様の契約を結んでいる。
レッドソックス親会社が世界展開する意味
FSGの「ワールドワイド」な展開の恩恵を受けた代表例が、本社がレッドソックスの地元マサチューセッツ州にあり、古くからの球団スポンサーである「ダンキンドーナツ社」だ。同社は中国への進出を考えていたが、レッドソックスへの協賛では前述のとおりエリアが制限されるため実現できない。
そこで見事に生きたのが、事業領域が広大であるからこその“引き出しの多さ”である。FSMの担当者は中国でのNBA人気の高さに目をつけ、現地でレブロン・ジェームスのバスケットボール教室を開催し、中国での同社の認知度向上において大成功を収めたのだ。すると、今度はジェームスのスポンサーである韓国サムスン電子が、ニューイングランドに市場を広げたいという意向を示した。言うまでもなく、それはFSMにとって得意とする事業領域だ。こうして、多くの引き出しがあるからこそのクロスセルが実現したのだ。
米国内の事例で興味深いのは、レッドソックスの親会社が、傘下のFSMを通じて、MLBアドバンストメディアでメジャーリーグの他の29球団のスポンサーシップも扱っていることだ。すなわち、ヘンリー氏はレッドソックスのオーナーでありながら、最大の宿敵といってもいい球団であるニューヨーク・ヤンキースのバナー広告のセールスにもかかわっているということになる。FSGの米国での存在感の大きさを示すエピソードだと言えるだろう。
日本企業では、森永製菓の米国子会社「米国森永製菓」の事例が実に面白い。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら