レッドソックスが日本企業にも人気なワケ 「ハイチュウ」や「ENEOS」の米国展開に一役
米国森永製菓とENEOS。双方のスポンサーシップを手掛けたFSMアジア事業戦略担当の吉村幹生氏は、「我々のミッションは、顧客に対しニューイングランドの“ドアを開く”ことでした」と語る。
「地元で大人気のレッドソックスが『ENEOSは僕らの友達だよ』と紹介すれば、ファンは高い確率で振り向いてくれます。レッドソックスはメジャーリーグの中でSNSのフォロワー数は1位ではありません。ですが、レッドソックスのことを、わざわざ検索してウェブサイトを見に来る人の数は30球団でナンバーワンというデータが出ています。つまり、それだけ熱狂的なファンが多く、球団との結びつきが強いということ。だからこそ『友達の友達はみな友達』という方程式が成立するわけです」(吉村氏)
アメリカのスポンサーシップ専門のコンサルティング会社「IEG」の2014年の調査によると、全米におけるスポンサーシップビジネスの70%がスポーツ関連であり、その次がエンタテインメント関連で10%。その差を見れば、アメリカではスポーツ分野でのスポンサー活動が有効であるという認識が非常に高いことがわかる。
米国でスポーツの求心力がこれほど高いワケ
なぜ、スポーツがそれほど求心力を持っているのか。「アメリカでは家族で政治的な考えや宗教が違うということは日常茶飯事です。それでも、年に1度のスーパーボウル(アメリカンフットボール・NFLの決勝)はテレビの前で家族そろって観戦することがほとんど」と吉村氏は話す。
つまり、スポーツが言語、宗教、価値観など、あらゆる壁を越えられる存在になっている、ということだ。「コミュニケーション方法も人々の価値観もこれだけ多様化した現代では、そのような存在は希有です。しかし、スポーツにはその多様な価値観を一気に巻き込む力がある。2020年の東京オリンピックも、その機会の一つになるはずです」。
吉村氏は、自らが手掛けるスポンサーシップを「パートナーシップ」ととらえているという。つまりは、ある意味では対等の立場でお互いにアイデアを出し合い、ベストなやり方を探し出すことで、双方の利益を最大化、いわゆる“ウィンウィン”の関係を作ろうという考えだ。
「単にスポンサーになっていただくという一方通行の図式ではなく、パートナーとして課題解決を共に目指していくイメージです。そうすることで、パートナー(クライアント)も『リバプールと組むならこうしたい』『レッドソックスにこんなことをしてほしい』とビジョンを持って踏み込んできてくれますし、われわれもそれに応えるべく自分たちの力を目いっぱい提供できる。われわれを使えば使うほど、投資効率が上がるということ。パートナーの皆様には、とにかく、『われわれを使い倒してほしい』とお願いしています」(吉村氏)
東京オリンピックが決まり、日本でも注目度が高まったスポーツのスポンサーシップだが、「とりあえず」の精神で時代の流れに乗ることが必ずしも正解とは限らない。
吉村氏はこう指摘する。「オリンピックは確かに魅力的なコンテンツです。でも、自社の課題を解決するためには、極端な例ですが、地元の少年野球のスポンサーになったほうがいいケースもあるかもしれません。自分たちの課題と目的、ターゲットによって、どういった施策、アプローチ、プラットフォームがベストなのか。そういった視点が成功のためには不可欠だと思います」
球団スポンサーなど、スポーツへのスポンサーシップで成功している企業は、自分たちがミッションを達成するためにどんなスポーツがどのように有効なのかも、やはりある程度理解していることが多いという。ここに一つのヒントがあるのではないだろうか。
どの企業も避けたいのは、「スポンサーとして、たくさんお金はかけたけれど効果がよくわからなかった……」という事態のはず。そうならないためにも、トレンドではなく、まずは何が自社の課題なのかに目を向けたうえで、それを共に解決しうるパートナーを見つけることが何よりも大事なことなのだ。
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