中国発の世界恐慌が起きる可能性は? シャドーバンキングと、レアメタルバブルは表裏一体(下)

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なぜ「レアアースバブルは終わった」と、言えたのか

まったく身に覚えのない誤解だった。日本と中国の外交ルートがないときに、中国側の立場も斟酌しながらレアアースの安定供給の交渉をしたことが、「出すぎたまねだ」とか「情報を中国にリークしている」などと、誰かが言ったらしいのだ。実際は、日本政府も中国との対応には、ほとほと困り果てていたようにみえた。

11年の5月から6月にかけて、まさにレアアース市場は極限を迎える。国内の在庫は尽き、工場停止寸前まで追いつめられている需要家さえ、出てきた。そこで日本側の需要家は徹底した「3R運動」を展開し始めた。3R運動とはリユース、リデュース、リサイクルである。繰り返し使い込み、使用量を極限まで減らし、今まで捨てていたものまで徹底的に回収を始めた。一方、産官学が総力を挙げて代替材料の開発にも注力した。

一方の中国側は、生産すればするだけ儲かるから、鉱山では密堀、盗掘、密売が横行。逮捕覚悟の流通業者は商品名の偽造輸出、密輸、密売と何でもありの状況となった。初めて会った見ず知らずの中国人業者が、頻繁に電話と売り込みに来るようになったのも、市況がピークをつけた2011年の7月からであった。

 この状況を見て筆者は金属新聞に「レアアースの宴は終わった」と書いた。顧客からは「いい加減なことを言うな!」としかられた。「そこまで言うなら、すぐにレアアースを持ってこい」と2度もしかられた。実際、契約不履行も覚悟で中国と契約をしたものの、現物を実際に入手するまでは需要家にコミット(約束)はできなかった。それほど逼迫が続いた。

だが、11年6月ごろから中国政府はレアアースの業界管理を強化したものの、レアアース市況は暴落の一途をたどった。先日、当時の状況を思い出して、経産省関係者と面談する機会があった。大げさに言えば、立場は違ってもレアアース戦争の戦友であり、今後のために、客観的事実だけでも報告書(公式文書)として残しておく必要性を議論した。何しろ、当時の経産省は事態を重く見て、1000億円のレアアース開発予算を国会に通したのだから。

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