中国発の世界恐慌が起きる可能性は? シャドーバンキングと、レアメタルバブルは表裏一体(下)

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私は個人的にはモリコープかライナスのうち、1社が生産中止をする可能性が高いとみる。そしてそのときが、レアアース市況が最安値をつけるときだと予見する。ベトナムやインドやカザフスタンの開発プロジェクト以外にも、具体化できそうなレアアース案件はいくつもある。だが、陽の目を見ることはないだろう。

要するに、中国のレアアース市場の安定化と市場の構成要素が整理されないかぎり、レアアースは国際市況商品にはなりえない。鄧小平氏の「中東には石油があるが、中国にはレアアースがある」というスローガンもいまだ健在だが、レアアースの本質は理解できなかったのかもしれない。中国の産業政策が朝令暮改を続けるかぎり、いつまでたってもレアアースの高騰と暴落は永遠に繰り返されることになるだろう。

中国発の世界恐慌が起こる可能性は?

長々とレアアース市場破綻の話をしてきたが、言いたいのは、中国のレアメタルとレアアース市場の規模は世界一だが、市場構造は「砂上の楼閣」だ、ということだ。

根本的な問題は、産業政策や経済運営に安定性がなく、政府方針が杜撰なことだ。過去は民間企業の活性化が中国のGDPを押し上げてきたが、胡錦濤政権時代には国営企業の強化を急いだ。

その結果、産業界は官尊民卑の傾向が生まれた。国営の大企業は政府方針に沿った形で、GDP競争のためには粉飾決算も辞さない企業まで出てくる始末。仮に損失が表面化しても、国営企業なら税金で補填すればよいといった安易な状況が生まれ、ますます経済が劣化していったのである。

日本人は「のど元過ぎれば熱さを忘れる」傾向がある。だが、レアアースと同じようなバブル崩壊が、今度はレアメタル(=希少金属。ニッケルやチタン、インジウム、タングステンなどの31品目47元素を指す)で起こる可能性があるのだ。

レアメタル相場は、確かにレアアースとは少し違う。レアメタルの高値追いは進んではいるものの、まだ史上最高値ではないからだ。ただし国際市場は値下がり中なのに、なぜか中国の相場だけがじわじわと値上がりを続けている。

市場構造が成熟していない中国のレアメタル市場において、いくら資本主義経済をまねた金属取引所のメカニズムを導入しても、健全な取引市場を形成できるとは現段階では考えられない。そして、その安易な投機市場に流れ込むシャドーバンキングからの金融資産が破綻するときに、中国発の世界恐慌が起こる可能性を否定できないのである。

中村 繁夫 アドバンストマテリアルジャパン社長

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なかむら しげお / Shigeo Nakamura

レアメタル(希少金属)の専門商社「アドバンスト・マテリアル・ジャパン代表取締役社長。中堅商社・蝶理(現東レグループ)でレアメタルの輸入買い付けを30年間担当。2004年に日本初のレアメタル専門商社を設立。著書に『レアメタルハンター・中村繁夫のあなたの仕事を成功に導く「山師の兵法AtoZ」』(ウェッジ)、『レアメタル・パニック』(光文社ペーパーバックス)、『レアメタル超入門』(幻冬舎新書)などがある。

 

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