前々回(中国のバブル崩壊は、レアメタル暴落が引き金に?)、前回(→中国がダメでも、東南アジアは日本になびかない)と、2回にわたって、レアメタルバブルと中国のシャドーバンキング問題が表裏一体のものであることを書いてきた。今回は、3回シリーズのまとめをさせていただきたい。私が言いたいことを、ひとことでいえば、「中国のレアメタル、レアアース市場の規模は世界一だが、その構造は、『砂上の楼閣』ということだ。
尖閣諸島事件にからんだ、レアアースの裏話を話そう
まず、いまだからできる中国のレアアース(=希土類。スカンジウムやイットリウムなどの17元素を指す)バブル崩壊の検証をしつつ、その裏話をしてみよう。いまや、レアアースの世界市場規模はわずか13万トン。値上がりのピークだった2011年度市場規模でさえ、多く見積もっても260億ドル止まりだったが、バブルが過ぎ去った現在は、ピーク時の10%の26億ドル市場にすぎない。
レアアースの投機相場が最も激しく動いたのは、2010年7月から11年後半にかけての1年ちょっとだ。尖閣諸島海域への中国漁船の侵犯問題が発生したのは、10年9月だ。
尖閣の侵犯問題が起きる2か月前の10年7月、中国産業省は5万トンの輸出許可のライセンス枠を突如、一気に4割もカットして3万トンにしてきた。当時、日本の輸入実績が3万トン以上だったから、ライセンス枠を全量、日本向けに回しても不足するという事態が生まれたのだ。
同年8月下旬の「日中ハイレベル経済対話ミッション」(団長は民主党の岡田克也元外相)では、会議当初からこの問題で大騒ぎしたのが裏目に出た。そもそも日本の通商行政のプロは、レアアースを会談の俎上に乗せるのには反対だった。日中のトップ同士が議論するほどの優先順位が高い内容ではないからだ。たった4億ドルしかない貿易取引で、中国側に借りを作っても仕方がないからだ。
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