あきらめない平成起業家の世界を変える"旅"

新世代リーダー trippiece CEO 石田 言行

トリッピースの事務所は、東京・渋谷の中心地から徒歩15分ほど離れた、ごく普通のマンションの一室にある。表に看板はなく、会社のロゴを表しているのは手のひらに収まるステッカーのみ。部屋の中には無雑作に並べられた本の数々、何やら激論の跡が残る殴り書きだらけのホワイトボードなど、創業まもないベンチャーの雰囲気にあふれている。部屋に現れた石田は、想像よりも大柄だった。ぼさっとした髪に、洗いざらしのTシャツと短パン、そして裸足。フラッと今すぐ旅にでも出てしまいそうな、いでたちである。

JTBやH.I.Sなど旅行大手と提携、観光庁長官賞も

そんな石田が率いるトリッピースだが、ただの学生発ベンチャーではない。何せJTB(ジェイティビー)やH.I.S(エイチ・アイ・エス)などの名だたる大手旅行会社10社近くとの提携関係を作り上げただけでなく、今年6月には若者の旅行振興への貢献が評価され、観光庁長官賞を受賞。つい先日の8月6日には米国系ベンチャーキャピタルなどから2億円の出資を受けるとともに、SNS大手ミクシィ(mixi)の元CFOを務めた小泉文明氏を取締役に迎え入れることも表明した。資本金はなんと創業時の数百倍にも膨らむ。

今や旅行業界のみならず、ネット業界でも話題を集める新鋭。トリッピースを作り上げた石田言行とは何者なのか。

「旅で隔たりのない世界を作りたい」。

インタビューの途中で幾度となく、石田はこの言葉を口にした。片時も頭から離れない、いわば人生のビジョン。石田は「旅で世界平和を実現したい」と本気で考えている。旅と世界平和。一見すると結び付かない。だが、これこそが石田とトリッピースの理念であり、すべての源泉である。

石田は幼い頃、祖母からかけられた言葉を今でも忘れない。

「人を人として見なさい」

結果として、その人が嫌いなら別に構わない。しかし、目の前の人を肌の色や宗教で判断してはいけない。祖母は石田にそう伝えたという。

「いあん」という、日本人には珍しい名前を持つ石田は、米国人の血を引く。太平洋戦争で被爆した祖母と米国人の祖父の孫である。もともと気が弱かったという石田には幼い頃、特徴的な名前を理由として、いじめられた経験がある。「世界中で人々が宗教や人種、肌の色が違うだけでいがみ合い、時には戦争が起こる」。そんな人間の“負の部分”を、身を持って知った。

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