一流の社長には自分よりも優秀な部下がいる

なぜ「守成」は「創業」より難しいのか

確かに「創業」は、創業なりの難しさがあります。ときに全財産を賭け、ときに多額の借金をして、五里霧中の海に舟をこぎ出すのですから、それこそ清水の舞台から飛び降りるような勇気と度胸が必要でしょう。

しかし、その創業は、いわば「点」です。一瞬といえば反論があるかもしれませんが、とにかく比較の上からするならば「守成」は「線」です。点を打つより定規もなく線を真っすぐに引くのが難しいのと同じで、経営を発展させ続ける「守成」は、相当に難しいことと考えるべきです。べンチャー、ベンチャーと草木もなびきますが、起業した後の「経営」をしっかりと勉強し、少なくとも起業と同時に「経営者としての意識、自覚」を持たなければならないでしょう。

創業社長としての必死さは必要ですが、その必死さが自己益、自己チューになっていないか、無我夢中のなかでも、周囲に感謝する心を持っているか、心の中で手を合わせているか、を自省する必要があります。

自分より優れた人を素直に認められるか

さて、経営(守成)を進めるときに、自分より優れた人材を集めることが肝要です。ともすると、創業社長は「オレが、オレが」という意識が強く、自分より優秀な人材を敬遠する傾向があります。しかし、自分より優秀な人を重用する賢さがなければなりません。

松下幸之助さんは、自著『指導者の条件』で102項目を挙げています。そこには、「謙虚であること」「素直であること」「あるがままに認めること」「言うべきを言うこと」「命を懸けること」などという項目が並んでいます。

経営者はこれほど多くのことを身に付けなければならないのかとめいって、前書きを読むと、これだけには限らずまだあるのだと書いている。これでは絶望的になってしまいますが、「私もこのすべてを身に付けているというわけではない」と書いてあります。ホッとしますが、ただ、どの項目1つでもゼロであってはいけない。100でないにしても10とか、20とか、30とか、とにかく若干でもないといけないと書いています。

それはそうで、部下は各項目の足し算で許されますが、指導者、社長たる者は、掛け算になります。すなわち、どれか1つの項目がゼロであれば、他が100であっても、ゼロになってしまうのです。そこに社長業の難しさがあります。

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