老後に月30万円使うには貯金はいくら必要か おカネを増やすための「360リスク法」とは?

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岩城:工藤さんは、まだ退職まで14年間ありますから、iDeCo(個人型確定拠出年金)とNISA(少額投資非課税制度)を使うのはいかがですか。まずiDeCoで、上限の月1万2000円(企業年金があるので)、年間14万4000円×9年=129万6000円。また、NISAでは600万円のリスクをとって運用することができます。NISA枠をいっぱい使うとして考えると、最悪3分の1の約200万円を失う可能性があると考えますが、前出の30年=「360」で考えると、月に5500円ほどです。もう少しリスクを取っても構わないと思えるのなら、一般口座を利用して投資をするとよいでしょう。ただし、いずれも管理費用などのコストの安いところで開設してくださいね。

資産全体でバランスを考える

岩城:さらに、資産全体でバランスを考えるともっとよいと思います。表を見てください。この表は、もともとはI-Oウェルネス・アドバイザーズの岡本和久さんが考案されたアセットアロケーションとアセットロケーションのマトリックスを応用したものですが、資産の配分と置き場所を併せて考えることができる優れものです。

どういう組み合わせにするのが合理的なのでしょうか。簡単に言えば、リスク資産は、国内外の株式インデックスファンド、無リスク資産は、個人向け国債変動金利型10年満期と普通預金に振り分けておけばよいでしょう。(詳しくは、『人生にお金はいくら必要か』の第3章「シンプルで正しいお金の増やし方」を参照)。

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工藤:え? そんなにシンプルでいいんですか? 運用ってもっと難しいのかと思っていました。

岩城:山崎さんによると、数百万円から数億円くらいまではこの方法で十分だそうです。今後、経済や金融の環境が変わると、より良い方法が見つかるかもしれませんが、現在のような低金利が続いている状態では、この方法で問題ありません。

工藤:わかりました。早速、コストの安いネット証券でNISAとiDeCoの口座を作ります!

いかがでしたか。年収600万円、貯蓄3000万円(もらえそうな退職金を含む)51歳の工藤さんは、月5万7000円を貯蓄していけば、現役時代の7割の生活水準(月30万円の生活)ができそうです。再掲しますが、ぜひ皆さんも自由に条件を入れ替えて、「あなたは65歳までにいくら貯めればいいのか」で計算してみてください。

岩城 みずほ ファイナンシャルプランナー・CFPⓇ

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いわき・みずほ / Mizuho Iwaki

特定非営利活動法人「みんなのお金のアドバイザー協会(FIWA)」副理事長。金融商品の販売によるコミッションを得ず、お客様の利益を最大限に、中立的な立場でのコンサルティングほか、講演、執筆を行っている。
慶応義塾大学卒。NHK松山放送局を経て、フリーアナウンサーとして14年間活動後、会社員を経てFPとして独立。著書に増補改訂版『人生にお金はいくら必要か』(山崎元氏と共著・東洋経済新報社)、『やってはいけない!老後の資産運用』(ビジネス社)、『「保険でお金を増やす」はリスクがいっぱい』(日本経済新聞出版社)、『結局、老後2000万円問題ってどうなったんですか?』(サンマーク出版)ほか多数。HP

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