バブル世代の「最悪上司」が会社をダメにする 若手を使って「社内秘密警察」を組織する例も

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藤野:あと、社内規定とコンプライアンスに熟知した人が、裏から人を刺すケースも、結構耳にします。たとえば出世頭の営業部長が、何かの機会に「うちの美人営業女子が頑張ってくれたおかげで……」などと冗談交りに言おうものなら、早速、「これは極めて差別的な発言であり、わが社的に問題だ」などと、たとえばダイバーシティ委員会のようなところに御注進するわけです。そういう「秘密警察的な社員」が、社内のいろいろなところにはびこっていて、つまらない足の引っ張り合いをしているのです。

中野:その秘密警察君は、実は30代くらいの比較的若手で、それを使っているのが、これまた50代の部長、役員だったりするわけです。しかも、秘密警察の人は出世が早いから、自ら進んでなりたがる人もいる。それがどんどんはびこれば、それは組織も死ぬはずです。

企業価値だけでなく、物事の本質を見極める力がある。「草食投資隊」が個人投資家から支持されている理由はここにある(左からセゾン投信の中野晴啓社長、レオス・キャピタルワークスの藤野英人社長兼CIO、コモンズ投信の渋澤健会長)

バブル世代が自ら退場して、若手に権限を譲れ

藤野:そう。だから、どこかでこの連鎖を断ち切る必要があるわけです。私たちの世代が、私たちの世代を浄化するしかないのかもしれませんね。もしくは、スチュワードシップコード(責任ある機関投資家)や議決権行使によって「本業をきちんとやれ」「ROE(株主資本利益率)を上げろ」と、株主が声を上げる。

渋澤:短期的な要求ではなく長期投資家として、企業経営をしっかりチェックしていく必要があります。

中野:あとは根本的に組織を変えることでしょうね。労働市場の流動性を高めて、終身雇用制を完全に終わらせる。そうすれば、既得権にしがみつく連中はいなくなります。あとは、バブル世代が自ら退場して、若い人たちに権限を委譲する。そうすれば、だいぶ組織の風通しはよくなります。

渋澤:大企業では、バブル世代がいちばん人数多いので、そこが抜ければ組織は正常化するでしょう。でも、バブル世代からすれば、定年まで10年ちょっとを残して、いよいよ役員になれるかどうかというときに、いきなりヒラにするというのは、どうなのでしょう。そんな、ポイ捨てみたいなことができるのでしょうか。

中野:でも、大して仕事をしていないような人たちに、年収で1000万円超の報酬を払う必要はないでしょう。こういう人たちの保身のために若い世代が死んでいくとしたら、それこそおかしい話です。私は、経営者が正当に従業員のクビを切れる法整備が必要だと思います。

渋澤:前回、顧問や相談役はいらないというような話をしましたが、なくしたほうがいいポストは、まだまだたくさんありそうですね。

中野:部付部長はもちろん、次長もいらない。部長の下は課長。そういうシンプルな組織が必要です。

藤野:本当に働いている人たちで組織を作れれば、日本企業はものすごく生産性を上げられるだけのポテンシャルを持っています。日本企業、ひいては日本という国を活性化していくうえで、改めて組織のリストラクチャリングを真剣に考えるべきときが来ているのでしょうね。

草食投資隊 渋澤 健、中野晴啓、藤野英人

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そうしょくとうしたい

コモンズ投信会長・渋澤 健、セゾン投信社長・中野晴啓、レオス・キャピタルワークス社長CIOの藤野英人の3氏で結成。根底には、「長期投資を根づかせたい」という3人の熱い思いがある。「草食投資隊」という名前は、投資=肉食系というイメージが一見つきまとうが、本質は違うのではないか、という3人の共通の考えによる。

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