――「パワーレンジャー」は日本の「スーパー戦隊」シリーズのアクションや特撮部分はそのままに、日本人が登場するドラマ部分はアメリカ人が演じ直して差し替えるという、日米ハイブリッドな制作スタイルが特徴なわけですが、そのアイデアを聞いたときはどう思いました?
最初はそんなにうまくいくの?と思ったんですよ。日本人だったらそういうアイデアは出てこない。なぜそうした話が出たかというと、特撮がいちばんおカネがかかるから。毎週放送されるテレビシリーズで特撮ものを週に2本作ることができるのは東映だけなので、「その特撮パートを東映から買えばいい」という発想はすごいなと思いました。サバンがいなかったらできなかったと思いますね。
――世界でできないものが、なぜ東映ではできるのでしょうか。
テレビ局から支払われる制作費だけでは作れない。どこからおカネを捻出するかというと、おもちゃやグッズを売って、その版権利益を制作費に投入しています。
スーパー戦隊シリーズ、仮面ライダーシリーズを放映していますが、膨大な数のCGを取り入れている。それを放送に間に合うように毎週作っているので、すごいスケジュールになっています。それはアメリカではなかなかできないですね。アクションシーンの撮影だって、われわれは1日100カットくらい平気で撮りますから。
週2本特撮ドラマを作れるのは世界で東映だけ
――ドラマ部分を新撮するうえで、「ここは守って」といったリクエストはあったのでしょうか。
ありました。当初、メインスタッフに戦隊ものについて説明すると「ヒーローが5人いるなんておかしい。ヒーローというのは1人に決まっているじゃないか」と言われるんですよ。そう言われて、なぜ1人じゃないかと考えた。基本的には神様じゃないかと。キリストは1人ですけど、日本は八百万(やおよろず)の神がいるから、複数いてもいい。一人ひとりは欠点があっても、5人で補い合いながら、力を合わせて戦う。そこが番組の見どころだし、サバンもそこが面白いと言ってくれた。
――放映が始まると、子どもたちの絶大なる人気を集めたそうですね。
本当に、手が付けられないくらいすごかったですよ。サニタリー用品なんかを売っているようなお店にも、グッズのほとんどがパワーレンジャーなんですよ。ほかのものが売ってないような、そんな状態でしたね。
――東映さんにも大きな収益につながったのではないでしょうか。
それは誤解ですね。利益の多くはサバンのところに行きましたが、東映には大して入らなかった(笑)。いまやサバン・エンターテインメントは巨大企業になっています。
――今回、ハリウッド映画版が製作された理由はどういったものなのでしょうか。
やはりアメリカでは、テレビシリーズがどれだけヒットしたとしても、映画をやらないと、ブランドとして認められない部分がある。ほかのヒーローはテレビも映画も両方やっていますよ。だから、しっかりと予算をかけてやりたいという話になったわけです。
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