「5人」だから戦隊ものは米国で大ヒットした 東映幹部が語る「パワーレンジャー」誕生秘話

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――名乗りというのは、やはり東映チャンバラ映画の歴史があるからというのもあるのでは?

そう。最初の「秘密戦隊ゴレンジャー」の殺陣師は大野剣友会が担当しているんですよ。チャンバラでやってきた人たちだから、名乗るのは当たり前なんです。東映だからできたものだと思います。ところがアメリカからすると、「なんで自己紹介を始めるんだ」と。そういう文化の違いって大きいですよ。ぶつかることはありましたけど、だんだんお互いを理解するようになってきた。最近ではアメリカのほうが日本っぽいですよ。彼らも名乗りを面白がってくれるようになってきた。

――今回の映画版でも、いわゆる戦隊もののセオリーを、しっかりと織り込んでいる感じがします。

いまや「パワーレンジャー」は2世代ヒーロー、24年やっていますからね。お父さんと一緒に楽しめる。今、アメリカ人の若い人に聞いたら、知らない人はほとんどいないですよ。

昔は日本から小道具を持っていくのは大変でした。最初、日本から小道具すべてを送ったときに、ロスの飛行場で止められちゃったことがあった。「ウェポン」と書いてあったので、日本から武器が来たということで大騒ぎになっていた(笑)。でもヒットした後は楽になりました。「パワーレンジャーの撮影です」と答えたらすぐ通してくれました。

シリーズものは毎年続けることが重要

鈴木武幸(すずき たけゆき)/東映顧問。1968年東映株式会社入社。長きにわたって特撮番組作りの先頭に立ってきた。1996年にテレビ第二営業部長に就任。2004年には取締役・テレビ営業部門担当、2008年常務取締役、2010年専務取締役に就任。2016年より現職 (筆者撮影)

――仮面ライダーもスーパー戦隊シリーズも、熱狂的なファンがついています。

そうですね。やはり長くやることですよ。毎年続けないとダメです。たとえば小学3年生、4年生くらいで卒業してしまったとしても、大人になって、子どもができたときに一緒に観てもらえる。それを狙っています。スーパー戦隊のマスクも基本的にはずっとたまご型ですし、スタイルはそれほど変えていません。むしろ仮面ライダーのほうが大きく変わっていますね。

――戦隊といえば合体ロボもすごいですね。

そう。売り上げの中でロボットの存在は大きいんです。最近の子どもは特に飽きっぽいんですよ。昔は1体のロボットで1年間遊んでくれたんですけど、今は3カ月くらいで飽きちゃう。だからすぐに2号ロボ、3号ロボと、相次いで出していかないといけないんです。

――戦隊シリーズで受け継がれているのはどういった点なのでしょうか。

最近の子どもたちは外で遊ばないですよね。でもテレビを観ると5人が仲良く、一緒にやっている。大変羨ましい。それを観て、仲間っていいなと思ってもらいたい。そういう番組が必要だし、続けたいと思っているんですよ。友達と遊ぶ、絆を作る、そういうことをきちんと見せていかないといけません。

――スーパー戦隊シリーズや仮面ライダーを観た子どもたちは、思いやりや、弱い者を助ける勇気なんかを学んでいきますね。

そこなんです。ピンクがやられたときに、レッドが助けてあげたいと思うわけですよね。ただ、あるとき、「ピンクのピンチをレッドが救うだけでなく、レッドのピンチをピンクが救うような話を作ってくれないか」という手紙が来たんですよ。そこまで日本の女の子は強くなってきたのかと気づかされました。だから、そういうストーリーを作りました。

それから女性戦士が1人というのは不自然ということで、「超電子バイオマン」からは女性戦士を2人にしました。女性もきちっと力を持っていかないとダメだなと思ったんです。戦隊シリーズも時代に合わせて進化していきます。

壬生 智裕 映画ライター

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みぶ ともひろ / Tomohiro Mibu

福岡県生まれ、東京育ちの映画ライター。映像制作会社で映画、Vシネマ、CMなどの撮影現場に従事したのち、フリーランスの映画ライターに転向。近年は年間400本以上のイベント、インタビュー取材などに駆け回る毎日で、とくに国内映画祭、映画館などがライフワーク。ライターのほかに編集者としても活動しており、映画祭パンフレット、3D撮影現場のヒアリング本、フィルムアーカイブなどの書籍も手がける。

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