「安倍vs岸田」は禅譲か挑戦か、それが問題だ 保守本流のプリンスは、どのように動くのか

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岸田文雄外相が安倍内閣改造の焦点に。写真は日欧EPA交渉の前にマルムストローム委員と握手する岸田外相(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

安倍晋三首相が8月3日に断行する予定の自民党役員・内閣改造人事の焦点の一つが岸田文雄外相の去就だ。

岸田氏は老舗派閥「宏池会(岸田派)」の領袖で、故吉田茂元首相が戦後政治で築いた「保守本流」のプリンスという立場だ。同氏は戦後歴代2位となる4年半を超える外相在任で、同じ1957年生まれの石破茂前地方創生相と並び立つ「ポスト安倍」の最有力候補と目されている。だからこそ、首相が今回の人事で岸田氏をどう処遇しようとするのか、同氏がそれにどう対応するのかが、来年9月の自民党総裁選とも絡んで永田町の注目を集めるわけだ。

今年4月19日に都内のホテルで開催された宏池会60周年記念パーティで「安倍時代もいつかは終わり、後がめぐってくる。その時に何をなすべきなのか…」と控え目な表現でポスト安倍への意欲を語った岸田氏。ここにきて宏池会独自の政策をアピールするなど「政権獲り」の姿勢も見せ始めている。

現時点での最大のポイントはやはり、1強首相に対する間合いの取り方だ。首相に付き従ったまま「禅譲」を期待するか、たもとを分かって「挑戦」するかの、どちらを選択するかということだ。7月13日の首相との会談で「安倍政権支持」を改めて伝えた岸田氏だが、ここにきて経済政策や憲法9条見直しなどであえて首相との立場の違いも鮮明にし、政治手法でも苦言を呈するなど"安倍離れ"の姿勢もにじませている。外相留任か、党3役への横滑りか、それとも無役となるのか。8月人事を前に、頂点を目指すための「岸田戦略」が問われている。

首相と同期の仲良しで"露払い役"に徹してきた

岸田氏は2012年暮れの第2次安倍政権発足時に外相に起用されてから現在まで、一貫して「安倍外交」の下支え役を務めてきた。麻生副総理兼財務相、菅義偉官房長官と並ぶ文字通りの「内閣の骨格」だ。

岸田氏は初当選(1993年)が首相と同期の当選8回。両氏は同じ中国地方(広島と山口)が選挙区で、3代目の世襲政治家という共通点もあって「初当選以来の親しい友人」(首相周辺)でもある。首相再登板時の人事で岸田氏は当初、党政調会長か経済産業相に意欲を示していたが、首相はあえて外相に起用した。「首相はタカ派、岸田氏はハト派の代表格」との党内評のように政治信条は異なるが、首相にとって「忠実に言うことを聞いてくれる気心の知れた人物だったことが理由」(側近)とされる。

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