では、小売業全体の動きはどうでしょうか。「小売業販売額」を見ますと、今年1月から4月までずっと前年比マイナスが続いていました。そして5月に前年比0.8%とプラスに転じ、6月は1.6%まで回復したのです。小売業全体の売り上げは、ようやく少し増え始めたところなのです(1ページの小売販売額を参照)。
さらに、皆さんの給料の動向を示す「現金給与総額」は、今年に入ってからも前年比マイナスの状況が続き、6月にようやく反転しましたが、それでも前年比0.1%の増加でしかありません。給料自体は減少し続けているのです。当たり前ですが、給料が上がらなければ、消費は伸びません。
これらのことから、どんなことが推測できるでしょうか。資産効果によって高額品の需要が増え、“ぜいたく品”を売っている百貨店の業績はよくなってきている。しかし給料は増えていないから、小売業全体では低迷している、ということです。特に食品や日用品を売っているスーパーやコンビニエンスストアなどの業績は、それほど改善していないのではないか、と考えられるのです。
そこで、「大型小売店業態別販売額(既存店ベース)」(右)から、スーパーとコンビニエンスストアの販売額の推移を見てみましょう。「既存店ベース」とは、過去1年間に開店した新規店舗を除いた既存店の売上高を集計したものです。新たな店舗を増やすと、自然に全体の売上高が増えますから、前年からの変化を見るためには、既存店ベースで比較するほうが正しく評価できるのです。
このデータによると、やはりスーパーやコンビニエンスストアの販売額はそれほど伸びていないことがわかります。コンビニエンスストアに至っては、6月にわずかに反転するまでは、12カ月連続で前年比マイナスが続いていました。
以上のことからアベノミクスが経済に与えた影響を考えると、円安株高による資産効果は生み出しましたが、皆さんの給料が増えたわけではありませんから、現状は消費全体を押し上げているとまでは言えない、と分析できるのです。
では次に、これをミクロの面から検証してみましょう。百貨店代表として高島屋と近鉄百貨店、コンビニ代表としてセブン&アイHDの決算内容を分析していきます。
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