ただ、近鉄百貨店は6月13日、高さ300メートルの日本一の超高層ビル「あべのハルカス」に「あべのハルカス近鉄本店」をオープンしました。開業日から7月11日までの約1カ月間の来客数は前年と比べて2.4倍増え、およそ290万人を達したということです。売上高も同比1.6倍となり、好調な滑り出しをみせています。これが次の四半期決算にどれだけ好影響をもたらすのかに注目です。
利益率高いPBが貢献、絶好調のセブン&アイHD
次に、コンビニ大手のセブン&アイHD(以下、セブン)の14年2月期(同)第1四半期決算を見ていきましょう。先ほどと同様に損益計算書(決算短信の8ページ参照)に注目しますと、「営業収益」は1兆2070億円から1兆3649億円と13.1%の増加。3~5月期としては過去最高の売り上げを更新しました。いったい、何の売り上げが増えたのでしょうか。
セグメント情報によると、大きく伸びたのは「コンビニエンスストア事業」と「金融関連事業」であることがわかります。
「コンビニエンスストア事業」の営業収益は、4431億円から6010億円まで35.6%も増えています。これは、徳島県や香川県への出店地域の拡大などでの475店舗の積極出店が大きな理由で、さらには安価で品質の高い、同社のPB(プライベートブランド)「セブンプレミアム」の売り上げが好調だったこともあります。
さらに、高価格帯のPB「セブンゴールド」の売り上げも業績に貢献しました。PBは利益率が高い商品ですから、セブンはPB商品の品ぞろえを強化することで収益力を高めているのです。それが功を奏しているというわけです。
「金融関連事業」の営業収益は、297億円から325億円となりました。これは、セブン銀行のATMの設置台数を増やしたことで、手数料収入が伸びたのです。セブン銀行は都市銀行などと提携していますから、1回の取引当たり何円というように手数料をもらっているのです。金融は安定した収益を出しますから、設置台数を増やすほど、収益力が上がる傾向があります。
このように営業収益が大きく伸びたことで、「営業利益」は672億円から736億円と約10%も増えています。以上のことから、セブンの業績は絶好調だと言えます。
セブンと先に分析した高島屋、近鉄百貨店とを比べると、セブンのほうがはるかに収益率が高いのです。本業の儲け(営業利益)をいかに効率的に稼いでいるかを示す「売上高営業利益率(営業利益÷売上高)」を計算しますと、セブンは5.4%、高島屋は3.0%、近鉄百貨店は1.1%しかありません。この点も、業績に差が出ている一因です。
マクロという面では、百貨店の業績が好調で、コンビニなどの小売業の業績は伸び悩んでいると分析できましたが、この3社については、業界全体の動きとは少し違うという結果になりました。マクロ経済は個別の企業活動の集合体ですが、個々の企業の動きは、必ずしもマクロと連動しているわけではないのです。一企業の業績だけで、業界全体、経済全体を推測してはいけませんし、業界全体だけを見て個別企業の状況を判断してはいけないわけです。両方の面から分析することが大切です。
マクロ経済や業界全体の指標から全体の動きがどうなっているかの仮説を立てたうえで、個々の企業の業績を見る。こうした訓練を積んでいくと、経済をより深く読み解くことができるようになるのです。
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