「文学賞なし」で人気作家になる人のリアル

「投稿サイト」で夢は叶いやすくなったのか?

こういった動きの中で、新人作家がデビューするチャンスは間違いなく拡大していると芹川社長。しかし、専業作家として生活していくハードルは上がり、これからは兼業作家が増えると予想している。

「文芸誌に連載した原稿を書籍化……という従来の流れだと、作家は原稿料と印税をもらえます。しかし紙の文芸誌の数も減ってきています。そのため書籍は書き下ろしが増える、すると作家は印税しかもらえない。専業作家として生きるのが厳しくなっているので、ほかに仕事をしながら執筆を続けていく方が増えるでしょう」

書籍化の判断は非常にシビア

これまで、作家志望者が書いた作品は、クローズドな世界で、編集者や文学賞審査員の独断で評価されていた。それが、「小説投稿サイト」「同人誌即売会」「セルフパブリッシング」などプラットフォームの普及によって、オープンな世界となり、誰でもたくさんの人に作品を届けられるようになった。

エブリスタをはじめとしたサービスや、SNSの普及もあり、話題の作品はたちまち拡散されるようにもなった。そしてその中から、読者が面白いと思った作品・作家が支持されるという、人気投票のような図式ができあがったというわけだ。

またエブリスタはエージェント機能も持ち、作家と出版社とのマッチングも行っている。作家の書きたいことや作風を理解したうえで、合いそうな編集部に紹介し、デビュー支援を行っているのだ。これらが小説家や志望者に与えた影響は大きい。

だが結局、専業にしろ兼業にしろ、作家として収入やステータスを得るには、出版社から小説を出すことが最もメジャーな方法である。確かに小説家になる手段は多様化し、チャンスも増えている。しかし、実際に書籍デビューするまでに、高いハードルがあることは変わらない。本を出版するには印刷代や流通費用、編集者やデザイナーなどの人件費、著者への印税など数百万単位のコストがかかる。出版社にとって、大きなリスクが伴うのだ。そのため、出版するかどうかの判断は、非常にシビアに行わざるをえない。たとえ一定の人気があり、いい作品であっても、見送られてしまうことも少なくない。

本になるということは、「似た作風の本がベストセラーになった前例がある」「クロスメディア展開されることが見込める」あるいは「採算を度外視しても文化的・社会的意義がある」など、必ずそれなりの理由がある。それらを兼ね備えた作品を生み出せないと、本の出版に至ることは難しいのである。

又吉氏に続く文学界のスターは、どこから生まれるのだろう。小説投稿サイトか、同人誌即売会か、はたまた芸能界か、従来の文学賞や持ち込みからか、もしくはそれ以外なのか。門戸が明らかに広がるなか、夢をつかめる人はいったいどれだけ生まれるのだろうか。

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