「文学賞なし」で人気作家になる人のリアル 「投稿サイト」で夢は叶いやすくなったのか?
5月に発売されたピース・又吉直樹氏の2作目となる小説『劇場』(新潮社)が、初版30万部でスタート、すぐに重版となった。これは発売元の新潮社で、村上春樹作品に次ぐ歴代2位の数字という。
又吉氏といえば処女作の『火花』(文藝春秋)が、単行本・文庫あわせて278万部というスマッシュヒットを記録。さらに芥川賞受賞という、文学界最高の栄誉にも輝いた。
同氏の大きな功績は、普段は本を読まない人が、手に取るきっかけになっていることだろう(そうでないと、この部数はありえない)。読書好きという限られた層だけでなく、社会に広く影響を与えているのだ。
そんな又吉氏の姿を見て、「自分も作家デビューしたい!」と思う人もいるかもしれない。かくいう筆者も、かつては小説家を志し、文学賞への応募を行っていた。しかし箸にも棒にもかからず、結局断念。現在は記者をしながら、新宿ゴールデン街で作家志望者が集まるバーを経営し、日々、作家志望者や若手作家たちと接している。
作家になるための手段が多様化
彼ら彼女らと話していると、作家になるための手段が多様化していることを実感する。かつては「文学賞への応募」「出版社への持ち込み」くらいしか選択肢がなかったが、近年は小説投稿サイトや、文学フリマなどの同人誌即売イベントが普及し、そこからデビューする人がかなり増えているのだ。
夫との性生活の悩みをつづった話題作『夫のちんぽが入らない』(扶桑社)も、元々は文学フリマで同人誌として販売されていたものだ。同作が並ぶブースには行列ができ、たちまち話題となって書籍化された。累計30万部を突破し、テレビアニメ化も決定したファンタジー『異世界食堂』(主婦の友社)も、小説投稿サイト「小説家になろう!」での連載がデビューのきっかけだった。Amazonでは、個人でも気軽に電子書籍を出版できる「Kindle ダイレクト・パブリッシング」というサービスも行っている。
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