子どもの糖質制限は何が良くて何が危ないか 血糖値の安定が肉体にも精神にも効く
しかし、糖質制限のパイオニアとして知られる江部康二医師(高雄病院理事長)はきっぱりとこう語る。
「子どもの成長に最も重要な栄養素は、たんぱく質と脂質です。筋肉や骨格、内臓の成長のための材料になるからです。ほかにもビタミンやミネラル、食物繊維が必須ですが、糖質はほとんど影響しないのです」
確かに体を形成する要素に、糖質はほとんど使われていない。しかし糖質こそ「脳の唯一の栄養素」といわれるエネルギー源ではないのかという意見があるが、「それが誤解なのです」と江部医師は断言する。「糖質を摂取しなくても、肝臓でブドウ糖と『ケトン体』(脂質から生まれる物質)が産生され、脳のエネルギー源となります。糖質を制限することで脂質が燃えやすい体になり、ケトン体の量も増えるので問題はありません」。
そもそも人類700万年の歴史の中のほとんどの時代の食事が、糖質制限食だったのだと江部医師は語る。糖質を主食とする生活は、農耕が始まった約1万年前からのものにすぎない。
「しかも、現在のような精製度の高い炭水化物をとるようになったのは近代以降。人間の体にとっては、糖質過多の食生活のほうが異質。だからこそ、さまざまな病気を引き起こすのです。糖質制限食こそ、人類の健康食なのです」(江部医師)
不安定な心は、血糖値の乱高下が招く
なぜ糖質制限することで子どもの学力が上がり、集中力がつくのだろうか。
「それは、糖質制限することで血糖値が安定するからです」と話すのは、精神科医の奥平智之医師(医療法人山口病院〈埼玉県〉精神科部長・新宿溝口クリニック)だ。
血糖値とは、血液中のブドウ糖の濃度のことだ。糖質が消化されるとブドウ糖に変わり、血液中にとけ出して血糖値が上昇する。それを下げるためにすい臓からインスリンが分泌され、血中の糖をカリウムとともに細胞内に取り込む。
しかし、糖質をとりすぎるとインスリンの分泌も大量になる。これが問題だ。「急上昇した血糖値が、今度は急激に下がります。体は突然ガス欠状態になり、集中力が低下し、やる気もなくなり、激しい眠けに襲われます。体はガス欠状態を回避しようとして、脳内ホルモンのアドレナリンやコルチゾールなどを分泌して肝臓でブドウ糖をつくり、下がりすぎた血糖値を再び上昇させます」(奥平医師)。
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