22歳寝たきりの詩人が紡ぐ「生きている証拠」 わずかに動かせる指先とペンで書き続ける

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脳性まひで体の自由がきかない「声なき詩人」が、その思いを紡ぎます(撮影:夏野苺)
体の自由がほとんど利かず、話すこともできない――そんな状態で、わずかに動かせる指先とペンを用いて「筆談」で詩を紡ぎ続ける女性がいます。
堀江菜穂子さん、22歳。出産時のトラブルから重度の脳性マヒと診断され、生まれてからずっとベッドで寝たきりの生活を送ってきました。周囲の人の多くから「この子には意思がない」「言葉が理解できない」と思われているように感じてきたなか、特別支援学校の中学部の頃に出合った筆談を通じ、初めて自らの「意思」を言葉にして表現するようになりました。
同じ学校の生徒が突然の死を迎えるのを目の当たりにするなど、昔から生と死を意識してきた彼女が「心をかいほうするためのしゅだん」として書いた詩は、これまで約2000編に上ります。
「こんなわたしでも いきていることをわかってもらうことが なやんでいる人のなにかのたすけになるのではないか」
初の本格詩集『いきていてこそ』のなかから、代表的な3作品を紹介します。

 

<詩人・谷川俊太郎氏も称賛した一編>

はたちのひに

はたちのひ わたしはいきていた

うまれたときに おもいしょうがいをおってしまい

わたしは はたちまでいきられないだろうといわれていた

 

そんなわたしを りょうしんは

ふびんさと もうしわけなさをもって

たくさんのあいじょうをそそいでくれた

 

このいえで ゆいいつのひとりむすめは

かぞくみんなからあいされて せいちょうした 

おおきくなるにつれ 

じぶんが 人とはちがうことにきがつきはじめた 

 

ほかのこどもたちが

あたりまえにできていることが

じぶんにはなにひとつ できなかったからだ

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