日本の教育、「皆同じでなければ」への違和感 乙武洋匡がオランダで見た子どもの伸ばし方

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――ここまでお聞きしていて、イエナプランはとてもすばらしい教育だと感じていますが、オランダ国内でもこうした教育を受けている子は一部です。進学・就職など、次のステージではドミニク校長も苦痛だったとおっしゃっていた伝統的な学校を卒業した人々と一緒に過ごさなくてはなりません。はたして、うまくやれるのでしょうか?

「問題ないと思います。ここで学んだことは、卒業しても覚えてくれているはずです。彼らは8年間かけて、どのような人間になりたいか、どのように人とかかわっていくのか、どのように自分の責任で仕事をするのか、そうしたことを考える力を身に付けています。ですから、次の学校や環境に進んでも、そうした姿勢や態度はきっと続いていくと思います」

――でも、彼らのクラスメートや同僚にもそうした力が身に付いていないと、結局は彼ら自身が苦労することになりませんか?

「この学校では、人にはそれぞれ強みと弱みがあること、そして先ほどお伝えした7つの要素を学んでいきます。それらがきちんと身に付いていれば、卒業後、どのように人を率いるリーダーになるか、またはどんなときに一歩下がって他者に指導権を譲るか、といった選択ができる人になっていると思います」

イエナプラン教育の課題は?

――あえてイエナプラン教育の課題を挙げるとすれば何でしょう?

「教員と保護者と子ども。この三者がいかに良好な関係を築きながら、連携をしていくか。教員が親の目線に立たないで教育を押し付けたり、親が教員の目線に立たないで要望を出してきたりということもある。そんなときは、両者で話し合いを持ちながら、どこかで妥協をしたり、適切な着地点を見つけたりしていく必要があります」

――ほかには?

話し合いをしながら、着地点を探ることも

「教師が見つかりにくいという点ですね。とにかく人が足りない。そもそもオランダ全体で教員不足なのですが、このような指導ができる教員や、この学校のコンセプトに合う考えを持っている教員はもっと少ない。それでも最低限の人数は必要なので、どこかで妥協をして採用をしなければいけないこともあるのです」

たった数時間の視察だけでは、とても全体像を把握することが難しいイエナプラン教育。しかも、この日は午前授業だったため、イエナプラン教育の特徴のひとつである「共同学習」の様子を見ることができなかったことは非常に残念だった。しかし、本稿でも触れさせていただいたように、日本の学校教育が抱えている課題を前向きに解決していくうえで、このイエナプラン教育には多くのヒントが詰まっていることだけは確信できた。

イエナプラン教育には多くのヒントが詰まっている。乙武氏が自身のオフィシャルサイトにまとめた石原さんご夫妻のインタビュー記事はこちら
イエナプラン教育については、オランダ在住の教育・社会研究家であるリヒテルズ直子さんの著書に詳しい。〈『公教育をイチから考えよう』(日本評論社)、『オランダの個別教育はなぜ成功したのか――イエナプラン教育に学ぶ』(平凡社)〉
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