日本の教育、「皆同じでなければ」への違和感 乙武洋匡がオランダで見た子どもの伸ばし方

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しかし、これもヘッドホンの件と併せて考えるとわかりやすい。最も大切なことは、子どもの学力が伸びることであるはずだ。一定の到達目標に達することが重視されるはずだ。

「どのような学び方で」「どのような教材を用いるのか」まで“みんなが同じ”である必要があるのだろうか。子どもたちの理解力や興味・関心、そして認知の強弱にはそれぞれ特性があるのだから、子どもたち一人ひとりが自分に最も適した教材や学び方で到達目標を目指すことのほうが理にかなっているのではないだろうか。

最後に、ドミニク校長に話を聞くことができた。

誰もが強みと弱みを持っている

――ドミニク校長は、イエナプラン教育ではない学校に勤務した経験はありますか?

「少しだけね。でも、私の教員生活のほとんどがイエナプラン教育での指導になります。ただ、私自身が通っていたのは、一斉授業が行われる伝統的な学校でした。私は子どもの頃には読み書きが苦手だったので、いつもいつも同じことを押し付けられて、それが本当に苦痛だったんですよ。だから、教師になるタイミングでさまざまな学校を見て回り、ここが最も自分の理想に合うと思ったんです」

――この学校で子どもたちに身に付けてほしい力は何ですか?

「まずは、“私は誰なのか”を理解すること。それには、自分の強みと弱みを知ることが必要です。そうして、彼らは自分だけでなく、誰もがそうした強みと弱みを持っていることを自然と学んでいくのです」

――誰もが強みと弱みを持っている。そのことを学んでいくわけですね。

「そのとおりです。さらに、この学校では自分の責任で計画を立て、判断し、決定をしていきます。そして、それらを周囲がきちんと尊重してくれる。そうした積み重ねによって、子どもたちは自己肯定感を育んでいくことができるのです」

――なるほど。自己肯定感を育むためにも、子どもたち一人ひとりの考えや判断を尊重することが重要なのですね。

「そのほかにも、あとで廊下にある子どもたちのイラストを見てほしいのですが、この学校では『共同作業』『創造』『プレゼンテーション』『計画』『責任』『起業家精神』『反映』という7つの要素を大切にしています」

さまざまなタッチの、子どもたちのイラスト
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