正念場の9月に向けて、7月が前哨戦になると考えるのは、米債市場が再投資政策の縮小を十分に織り込んでいないからだ。7月5日発表の6月FOMC議事録では、正常化計画を決定した時の詳細な議論を確認する必要がある。
また7月28日発表の2つの米国の経済指標(4~6月期GDPと雇用コスト指数)が重要な判断材料になるだろう。前者は1~3月期の弱さから4~6月期が持ち直すことで一時的な景気減速を確認できるとみる。上半期で平均して2%台前半の成長となれば、米国の潜在成長率(2%弱)を上回る緩やかな景気回復が続いていると言えるだろう。また後者はFRBも重視する賃金先行指標だ。賃金の上昇期待をつなぐ数字となれば、FRBは次なる利上げも視野に入れながら、淡々と9月に再投資政策の縮小を決定(10月開始)すると予想する。
軽度な調整をこなしていく相場展開に
6月27日のドラギECB総裁発言が、政策調整の可能性を示唆したと受け止められると、ユーロ高とともにドイツ国債の売りが加速し、米国債にも売りの流れが波及した。これは2015年春に、ドイツの物価が前年比マイナスから短期間でプラスに転じた時、似たような動きがあったことを思い出す。ドイツ発債券売りの動きが2ヵ月程度続いた。
翌28日にECB関係者が火消しに回ったが、カーニーBOE総裁の年内利上げ視野の発言も加わり、29日に10年物米国債は一時2.30%台、ドル円は一時113円手前まで上昇した。他方で米国株はハイテク株主体に急反落。主要中銀のタカ派メッセージに敏感に反応も、四半期末のポジション調整の部分もありそうだ。米国株安の裏側で原油価格は持ち直し、米10年債は売られても最後は買われて、一気に金利上昇とはなっていない。
2017年上半期のゴルディロックス相場は、終盤でほころびを見せたが、これが終わりの始まりなのか、軽度な調整(今後何度か繰り返す)になるかは、主要中銀の舵取りが鍵を握るだろう。一斉に正常化の道筋を示せる前提条件には、世界的な景気回復がある。その前提のもと、正常化の遅れに伴う過度なリスクテイクへの警鐘を始めたのだろう。警戒心が足りない市場への地ならしであれば、金融市場の混乱となっては意味がない。筆者は9月に向けての前哨戦は、軽度な調整をこなしていく相場展開を予想する。
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