筆者は、6月下旬のBIS(国際決済銀行)年次総会に主要中央銀行総裁が一同に揃い、問題意識を共有したと推察している。25日発表のBIS年次報告書では、「景気見通しの改善が意外なほどインフレに影響しない状況を好機ととらえ、量的緩和と歴史的低金利の"大いなる巻き戻し"を加速するべき」との見解が示された。主要国は緩やかな景気回復のもと、物価上昇圧力の鈍さが共通課題であり、回復局面で金融政策の正常化を進めるべきとの意見が、米国主導で強まったのかもしれない。
かつて2008年9月のリーマン・ショック後の危機対応の哲学として、BISビュー(事前にバブル発生抑制に努める)とFRBビュー(事後の緩和対応で可能)が対峙した。そこから10年弱の歳月を経て、BISビューがグローバルスタンダードとして認められたといえる。現在は皮肉にもFRBが率先して出口戦略を進めている。7月12日のイエレンFRB議長の議会証言では、正常化への強い思いが改めて語られるのではないか。日米金融政策の違いを再認識する機会となれば、円高進行は考え難いだろう。
7月公表の議事録と2つの指標が、相場を占うカギ
今日から、営業日ベースでの2017年下半期がスタートする。豆知識として、ゴルディロックス相場の由来はご存知だろうか。ゴルディロックスとは、英国の童話「ゴルディロックスと3匹の熊」の主人公の女の子の名前だ。その童話では、熊の親子の家に迷い込んだゴルディロックスが、熱すぎず冷たすぎない程良い温かさのスープ、ちょうど良い堅さのベッドを見つける。そこから転じて、ゴルディロックス相場は、程良い状況が続く適温相場を意味する。ゴルディロックス経済とは、インフレなき経済成長を達成する理想的な景気を指す。
2017年の後半戦の見所は、上半期に米株高・米債高の程良い状況にあったゴルディロックス相場が、どのように変化していくかであろう。正念場は9月に開催される7日のECB理事会と20~21日のFOMCであり、当面は9月に向けた前哨戦とみる。
6月13~14日開催のFOMC(米国連邦公開市場委員会)では、利上げ決定と再投資政策の縮小方針を発表した。筆者はイエレン議長の金融正常化に向けた強い意思を感じたが、FRBが6月に示した経済シナリオと、それに懐疑的な市場とのギャップは、簡単には埋まりそうにない。物価の伸び悩みを慎重に受け止める米債市場では、計画通り進まない可能性を前提にイールドカーブがフラット化(長短金利差が小さくなること)した。
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