英国がEU離脱を選んだ国民投票から1年。6月22~23日に開催されたEU(欧州連合)首脳会議は久しぶりに希望と楽観が支配した。
EUを覆うムードが変わった背景には経済・雇用情勢の改善がある。EU経済は、拡大テンポを速めており、失業率低下のピッチも上がってきた。景気の拡大は加盟国全体に広がっているし、長く停滞してきた投資も力強さを増してきた。
フランスで親EUを掲げたマクロン大統領が誕生、反EUのポピュリスト政党の台頭という流れを止めた効果も大きい。マクロン大統領は、国民議会選挙での単独過半数確保という勝利を手にして、今回、EU首脳会議に初参加した。会場前で待つテレビ・カメラにウィンクで応え、さっそく存在感をアピールした。
英国のEU離脱、EUへの懐疑を隠さない米国大統領の誕生は、今年初めに懸念されていたようにEUの遠心力を強めるのではなく、むしろ結束を強める方向に働いている。
求心力低下するメイ首相に高まる圧力
EU首脳会議には希望と楽観を共有できない首脳も参加した。地滑り的な勝利を狙った解散・総選挙という賭けに敗れた英国のメイ首相だ。
メイ首相の求心力の低下は著しい。キャメロン政権で財務相を務め、現在、英紙イブニング・スタンダードの編集長を務めるジョージ・オズボーン氏が用いた「a dead woman walking(歩く屍あるいは死刑囚)」という表現があてはまってしまう状況だ。
総選挙キャンペーン期間中に支持率が急回復した労働党の勢いは続く。総選挙での得票率をかなり正確に予想したSurvationが19日に公表した世論調査では、コービン党首率いる労働党の支持率が44%でメイ首相の保守党の41%を上回る。
21日には英国議会でエリザベス女王がメイ首相の施政方針を読み上げたが、29日に予定される施政方針への信認投票を乗り切るには、北アイルランドの地域政党・民主統一党(DUP)の協力が不可欠。しかし、合意に至らないまま、メイ首相は、EU首脳会議に出席することになった。
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