日本には、なぜ「名演説」が存在しないのか

イェール大学で教えた日本人2人が語る

斉藤:日本の文化として、書くことに重きを置いている傾向があります。「大物は軽々しく口を開かない」というような文化が日本にはあるようです。一方、アメリカの100年前の大学のカリキュラムを見ると「レトリック」というのが必ずあって、弁論も一般教養の必修科目です。つまり言葉で説得する文化なんですね。ギリシア時代からの西洋文明の伝統ということもあるでしょう。それと、科挙の文化との違いですよね。そこを理解する必要があると思うんです。

斉藤淳氏(撮影:今井康一)

浜田:初対面の相手に自分を表現するには、しゃべるしかありません。それをアメリカでは非常に大事にしています。だから最初は失敗を恐れずにやるしかない。僕は英語に関しては失敗談がたくさんあるんです。

イェール大学のオーラルエグザミネーションでも、「浜田君の英語はまったくわからなかった」と(笑)。「だけど内容は正しいらしい」ということで、「優秀」の成績で通してくれた。

それから、英語の勉強のためにシカゴの軍人さんのクラスに行ったら、「イタリアンと言ってはいけない、アイタリアンと言え」「オフンではなく、オフトンと言え」なんて、変なクセまで教わった(笑)。英語を学ぶためにはおカネを使わねばならない。私はおカネをけちり、「日米会話学院」に受かったのに通わず、あまりいい塾にも行かなかった。

アメリカの大学寮で友人が「原子力潜水艦が3艘沈んだ」という深刻な話をしていたときも、こっちはわからないのでニヤニヤしている。みんなすごく怒っていたと思うんです。最初は事情がわからなくていろいろトンチンカンなことをするものです。でも、それで臆してしまうと何もできなくなります。だから留学生には、「外国に行って半年や1年は何か変なことが起こっても自分の責任と思うな」と言っています。

斉藤:語学力よりも先に、小さなことでめげない精神力というかガッツというか、鈍感力も大切なことですね。

必要なのは「議論しながらプロジェクトを達成する力」

浜田:自分の主張をしっかり発言できる人が世界で活躍する。そのためには、先生の言うことを疑ってかかって、いろいろ反論し、それに先生が真剣に答えられるような雰囲気にする。また、意見を異にする相手とは、議論は議論として、前に対立したこととは関係なく仲よくできる関係性が必要です。

人と共同で達成するプロジェクトが何かあるといいと思います。みんなが議論しながら協力していくというプロセスが、日本の教育にはあまりないのかもしれません。

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