大人気「AIスピーカー」に過度な期待は禁物だ 現在の実力は音楽を楽しみやすくすること?

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市場を立ち上げたのはアマゾンだ。同社のエコーは、クラウドを活用した独自のAI「Alexa」を用い、話しかけて操作できるスピーカーとして2014年11月に誕生した。アマゾンは「Prime Music」(有料のプライム会員向けサービスの1つ)などの音楽サービスを持つ。それらのサービスを手軽に利用できるスピーカーとして作られたものだといえる。

だがエコーはその後、さらに変貌を遂げていくこととなる。その理由はAlexaの進化にあるといっていい。Alexaにはもともと音楽関連の機能だけでなく、話しかけて情報を調べたり、天気やニュースを確認できたりする機能が備わっていた。アマゾンはAlexaの機能強化に注力し、話しかけることでアマゾン上で買い物などができる機能も追加していった。

そしてもう1つ、Alexaに大きな進化をもたらしたのが「スキル」の存在だ。スキルはAlexaの機能を拡張できるプラグインのようなもので、これを追加することでAlexaがより幅広い要求に応えられるようになる。スマホでいう"アプリ"に相当すると考えればわかりやすいだろうか。

アマゾンは2015年にこのスキルを開発するキットを公開し、技術者がAlexaのスキルを自由に開発できるようにした。その結果、ホテルを予約する、配車サービスのUberで配車を依頼するなど、アマゾン以外のサービスを利用できるスキルが開発・公開され、すでにスキルの数は1万を超える規模に達しているという。

スマホ参入に失敗した過去

なぜアマゾンは、グーグルやアップルなどほかのIT大手に先駆けてエコーをヒットに導くことができたのか。そこにはアマゾンが、かつてスマホで大きな失敗をしたことが影響している。

2014年6月にお披露目されたFire Phoneはスマホを通じて有料会員を囲い込もうとしたが、失敗に終わった(写真:flickr/Diego Gómez)

アマゾンはタブレットの「Kindle Fire」シリーズの成功を基に、スマホ市場へ本格進出するべく、2014年6月に「Fire Phone」を投入した。

Fire Phoneはカメラを4つ搭載し、端末の傾きを正確に検知することで、本体を傾けて操作できる機能を備えていた。また、本やCDにカメラをかざすとアマゾンの商品データベースに基づいた情報が表示され、その場で購入できる仕組みも搭載されていた。

意欲的な端末ではあったものの、市場からの評価は得られず販売不振に陥り、その影響で業績を大幅に落としたため、約1年で事実上販売を終了した。これを機にアマゾンはスマホ進出をあきらめ、成長の芽が見えたエコーとAlexaの開発に舵を切ることができた。それがAI分野で他社を出し抜くことができた要因といえよう。

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