子どもの作文を読んで「月並みでつまらない作文だ」と思っても、「もっとよく考えて、工夫して書きなさい」などと言ってはいけません。まずは、褒められる部分を見つけて、「カギかっこを使って会話が書けたね」「ここの書き方はいいね。驚いたときの気持ちがよくわかるよ」などと褒めます。それで終わってもいいですが、もう少し指導したいと思ったら「このとき○○君はどんな気持ちだったかな」などと聞いて、子どもが答えたらそれも書かせるようにします。
勉強以外でも同じです。子どもの描いた絵を見て「下手だなあ」と思っても、そんなことはおくびにも出してはいけません。全体を漠然と見るのではなく、部分に注目すれば「夕焼け空の色がきれいだね」「たくさんの色が使えたね」「小鳥がかわいらしく描けたね」「このライオンは迫力があって今にも動き出しそう」などと褒めることができます。
子どものサッカーの試合の後も、結果はどうあれ、まずはよかった部分を見つけて褒めます。「最後までよく頑張ったね」「すばらしい声が出てたね」「○○君へのスルーパスがドンピシャだった。しびれたよ」「前半終了直前のコーナーキックはプロ並みだったよ」などと褒めてあげましょう。
短所だけ見つけ出してしかってもうまくいかない
子どもの性格や行動についても同じです。たとえば、次のような子がいたとします。だらしがなくて、やるべきことをやらない。やりたいことだけやって、嫌なことは後回し。何度注意しても直らない。勉強は全滅で、運動も音楽も図工も体育も苦手。このような子どもの短所ばかりに注目して、しかって直そうとしてもまずうまくいきません。短所にはあえて目をつむり、褒められる部分を見つけ出して褒めることが大切です。どんな子でも、褒められる部分は必ずあります。その子のすべてが丸ごと全部ダメなどということは、絶対にありません。
たとえば次のような部分があるかもしれません。いつも元気でエネルギーにあふれている。にこにこしていて笑顔がすばらしい。人を笑わせるのがうまい。面白い遊びを思いつく。人と違う発想ができる。好きなことには時間を忘れて没頭できる。周りに影響されることなく自分のペースで行動できる。口笛がうまい。手先が器用、などなど。このような部分を見つけ出して褒めてあげられる親なら、子どもは伸びます。でも、実際は、褒められる部分には目をつむって、短所だけ見つけ出してしかっている親がほとんどです。
ところで、あるとき私はこういう光景を見ました。ある母子が新幹線の駅ビルの書店の前を通りかかったとき、子どもが「本、見たーい。買いたーい」とごねはじめました。普通なら「いま急いでるでしょ。わがまま言わない!」となるのですが、そのお母さんは、まず「あなたは本好きだもんね」と子どもを褒めました。そして、歩きながら「本好きだから、本をたくさん読んで、言葉もたくさん覚えたもんね」と褒め続けました。その後で、「でも、いまは無理だからごめんね、この次にしようね」と言うと、子どもはごねるのをやめて、ニコニコしながら付いていきました。私は実にすばらしいお母さんだと感じ入りました。
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