結婚5年目「妻に餌はやらぬ」夫へのジレンマ 結婚生活は男女の「すれ違い」が出発点だ

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恋人同士の間は、「男性はリードする側 / 女性はリードされる側」という関係が問題になることはありません。それどころか、非対称的な関係性が駆け引きを生み、それが恋愛に特有の楽しさや緊張感をもたらします。内気な女の子が、本当は両思いなのになかなか相手の恋心に気がつかないというのは、少女漫画でも定番の展開です。

しかし、結婚では長期的にいい関係を築いていかなければならないので、お互いの意見を尊重し合える「平等な関係」が大切になります。みそ汁は赤みそか白みそかといった小さな問題から、住まいは賃貸か持ち家かといった大きな問題まで、リードする側である夫の意見ばかりが通ったら、「どうして2人の問題なのに、自分だけで決めようとするの!」と怒りを感じ、妻の不満は確実に募っていきます。

あかりんさんは、結婚後も「女性として尊重されること」を期待していますが、本質的には、「人として尊重されること」のほうが大切なのではないでしょうか。

共働きで金銭的には平等かもしれませんが、恋愛中に立場的には「男はリードする側 / 女はリードされる側」という関係が形成されているので、「たまには一方的にお金をかけてプレゼントをしてほしい」との思いが、軽んじられてしまうのです。

この気持ちを察してほしいと思ってはいけません。男性の主体性を引き出そうとする努力では、いつまで経っても女性はリードされる側のままになってしまいます。夫婦間で「平等な関係」を築いていくためには、自分の意見をしっかり主張する必要があります。「たまには何かプレゼントしてほしい」とストレートに訴えてみるのもいいですし、もし、自分の気持ちが尊重されていないと感じるのなら、それをきちんと言葉にして伝えるべきです。

結婚後は2人の「新たな関係性」を満喫せよ

恋愛結婚という言葉は、あたかも恋愛から結婚へのスムーズな移行が可能であるかのような印象を与えます。こうした誤解が、結婚後の「思っていたのと違う」というガッカリ感の背景にあります。

恋愛と結婚はまったくの別物です。交際当初を思い出して、あの頃はよかったと嘆くのではなく、2人のつながりが新しい局面に入ったことを理解し、「平等な関係」づくりを目指してください。あまり、堅苦しく考える必要はありません。「平等な関係」が保証する安心感に基づいて、甘えたり、甘えられたりできるのが、長期的に一緒にいる2人に与えられる、恋愛にはない特権なのです。

読者の皆様から田中先生へのお悩みを募集します。「男であることがしんどい!」「”男は○○であるべき”と言われているけれど、どうして?」などなど、“男であること”にまつわるお悩み・疑問がある方はこちらまでどうぞ。相談者の性別は問いません。
田中 俊之 大妻女子大学人間関係学部准教授

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たなか としゆき / Toshiyuki Tanaka

1975年生まれ。2008年博士号(社会学)取得。武蔵大学・学習院大学・東京女子大学等非常勤講師、武蔵大学社会学部助教、大正大学心理社会学部准教授を経て、2022年より現職。男性学の第一人者として、新聞、雑誌、ラジオ、ネットメディア等で活躍している。

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