リアルな疑似体験で海外駐在員を鍛える グローバル人事の「目」(第11回)

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最近、海外駐在員に求められるレベルがかなり高くなってきた。「何とか業務をこなすことができる」程度のレベルの駐在員ならば、現地法人から「No」が突きつけられることは珍しくない。新興国の現地企業が力をつけ、海外現地法人の脅威となってきたため、駐在員のレベルアップが求められているのだ。

追い打ちをかけるように、新興国政府は先進国のノウハウを習得した現地企業を支援する方針を打ち出している。戦後の日本も外資系企業を強く規制して、国内産業の成長を促進させたが、それと同じことが新興国で起きているのだ。

これまでのように「座学」で知識やスキルを学ばせる方法では、現地法人が要求するような高いレベルの駐在員を育成することは難しい。そこで、座学よりも、その育成方法について解説する。

社員を本気にさせる海外視察研修--大手小売りA社の例

以前、日本の大手小売りのA社は、次世代リーダー候補を海外視察に派遣していた。最初に米国に派遣し、その後に香港や上海など、アジアの有望市場や新興国を視察させていた。米国では、アパレル通販のザッポスなどを視察させて、社員からの評判が良かった。

しかしアジアに関しては「日本より小売りのビジネスが進んでいないので学ぶものなし」と評価が低かった。A社の日本法人と新興国企業のサービスレベルが格段に違うため、アジアでの視察に意義を感じていなかったのだ。そこで、A社は海外研修の内容を大きく変更した。

具体的には、新興国に到着した後、視察の前にホテルの会議室で2日間、「アジア戦略の起点として最初にこの地域を制するにはどうしたいいのか」というテーマでワークショップを行う。そして、そのテーマを検証するという目的を持って視察するようにしたのである。その結果、現地の歴史や文化、現在の消費者動向を踏まえて視察すると、現地法人でも気づかなかったビジネスプランが多数生まれた。

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