もちろん、時に気に障ること、痛いと感じることがあるでしょう。しかし、参謀役的部下が会社を思い、とらわれずに物を申してくれているならば、素直にその部下の諫言に耳を傾ける。そのような参謀役を積極的に重用するような社長でなければ、経営者として大成しないでしょう。
次に、補佐役的部下です。社長が出した指示がつねに正しいということはありえません。人間ですから、言い間違いの指示、勘違いの政策もあります。そのとき、参謀役的部下の場合には「おそれながら殿、それは好ましくありません」と諫言するのに対して、補佐役的部下は諫言しません。社長の好ましくない政策であっても「わかりました」と言って、まったく否定しません。
そして「かしこまりました」と退出しますが、数日、数カ月、時に1年以上ということもありますが、やがて、しっかりと成果を出す。そして、社長のところに報告に来ると「社長のご指示に従って取り組んだ結果、かくかように成果を上げることができました。これも社長のお陰です」。そういうことができる部下が補佐役的部下です。
補佐役的部下は社長の「思い」に従う
秘書役的部下と参謀役的部下と補佐役的部下。いずれも重要な役割の部下ですが、そのなかでもレベルが高いのが、補佐役的部下です。優秀な補佐役を持つことは非常に難しい。しかし、補佐役的部下の有難さをいちばん痛感するのは、社長自身ということです。あっ間違ったかな、勘違いだったのかなと心のなかでフツフツと思い続けているところで、補佐役的部下が大きな成果を上げてくれるので、社長は心のなかで手を合わせて感謝する。感謝しなければ社長として失格でしょう。
なぜ社長の誤った指示を受け止めておきながら成果を出せるのか。それは、社長の指示を表面的な言葉ではなく、「思い」として受け止めているからです。会社を思う社長の願いを読み取りながら、その指示を受け止めるのです。「社長のご指示に従って」という言葉についても、ウソを言っていると思うようではあなたの成長はそこで終わるでしょう。補佐役的部下が「社長のご指示に従った」のは、社長の言葉ではなく「社長の心に従った」ということなのです。
松下幸之助さんが成功したのは、高橋荒太郎(あらたろう)さんという補佐役がいたからです。高橋さんが補佐役であったからこそ、松下さんは成功したともいえます。そのような高橋さんに感謝していた証拠に、松下さんは生前から「三家法要」を高野山で毎年営んでいましたが、その「三家」とは、当然、松下家。そして、丁稚(でっち)の頃、商いを教えてくれた五代家、加えて高橋家なのです。
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