ホンダの定年延長、「割を食う」のは誰なのか 総人件費抑制や成果主義拡大の意味

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ホンダには国内有数の自動車メーカーだけでなく、世界最大の二輪車メーカーという顔もある(撮影:風間 仁一郎)

ホンダが国内自動車メーカーとしては初めて、65歳まで定年を延長する方針を打ち出した。国内従業員約4万人が対象となる。会社と労働組合の間では大筋で合意しており、労使の協議を経て2016年度の正式導入を目指すという。

2013年に施行した「改正高齢者雇用安定法」により、企業には希望する従業員については65歳までの雇用維持が義務付けられたが、その形態は再雇用でも定年延長でも良いとされている。ホンダも、60歳の定年退職後も希望すれば65歳まで働き続けられる再雇用制度を、2010年度から導入して対応してきた。高齢者雇用には、年金支給開始年齢の引き上げをにらんだ福祉的な側面もあり、これに応じるホンダの定年延長は、世間から好評価を受けているように見える。

ホンダ単独の視点で考えると、これまでの再雇用制度をやめて定年延長に切り替える背景には、古い機械や人海戦術の生産ラインに精通した人材の確保や、技能伝承の効果的な実現などの狙いもありそうだ。

ベテラン社員の活躍が期待される

これまでのホンダの場合、再雇用契約を結んで働き続ける社員は5~6割程度。給料は現役時代の約半分まで下がり、負担の重い海外駐在はできないなど、活躍の場が限定されていた。一方、ホンダが新たに65歳まで定年を延長する新制度の場合、給料は現役時代の約8割を保証して、海外駐在の道も開く。

自動車生産はかつて、日本国内でも人海戦術で生産を行っていたが、産業用ロボットの発達や人件費の上昇により、徐々に生産現場の人員がロボットに置き換えられていったという歴史がある。ただ、自動車メーカーがアジアや中国などの新興国に生産拠点を構える場合は、ロボットを入れるよりも人件費のほうが安いので、まずは、かつて日本で行われていた人海戦術で生産ラインを作られることが多い。日本で使われなくなった古い機械を移設して、新興国の生産拠点で再活用する場合も少なくない。

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