ホンダの定年延長、「割を食う」のは誰なのか 総人件費抑制や成果主義拡大の意味
ホンダが定年延長するベテラン社員には、こうした場面での活躍が期待される。新興国で生産現場の技術指導を行うにあたって、自動化された現場しか知らない若手社員よりは、人海戦術で生産されていた時代を知り、古い機械も扱えるベテラン社員のほうが技術指導もスムーズにいくということだ。
自動車の製造ラインは前述したように大幅にロボット化されたとはいえ、まだまだ人の手がかかる工程は存在する。ボディーの溶接のような重量物を扱う工程はロボット化になじむが、配線をつなぐとか、ライトを取り付けるとか、デリケートな作業は現在の技術ではまだまだロボット化できない。
そのため、ホンダを含めた自動車製造会社は「期間従業員」という形でライン作業に従事する人材を大量に募集している。ところが、景気の回復や少子化の影響などを受けて、足元ではさまざまな産業で人材不足が指摘されている。期間従業員を募集しても他社との取り合いになり、求人広告など採用コストの負担も軽くはない。
また、平成24年の労働契約法の改正により、有期雇用契約が通算5年を超えて更新された場合は無期雇用に転換させなければならないというルールが定められたことも、生産台数に合わせて柔軟な人員調整を行いたい自動車メーカーには悩みの種。このような状況を踏まえるならば、社外から期間工を集めるより、仕事にも習熟したベテランを活用したほうが合理的だとホンダが考えるのは自明だ。
係長級以下の若手社員に大きな影響
しかし、ホンダの定年延長を軸とする人事制度改革は、必ずしも良い側面ばかりではない。
ポイントは定年延長と同時に進められる、給料における成果主義の拡大や時間外手当の割増率の削減、国内出張日当の廃止などの施策だ。結局のところ、総人件費は現行と同水準に抑える方向で、これに労使が合意する見通しになっている。
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