会社幹部はお坊さん、兼業僧侶の密かな野望

朝6時のお勤めで疲れた心と体をリセット

「朝は毎日、5時半に起床し、メールのチェックなどを行い、6時から朝のお勤めを40分ほどいたします。そのあとに本堂、境内の掃除をし、朝食。お寺の仕事はその日によって異なります。法要に行く日もあれば、事務仕事を行う日も。檀家さんの対応をしたり、御朱印の対応、他寺院の行事などをお手伝いに行く日もあります。

深夜まで働いても「朝のお勤め」を欠かすことはない

夕方に、再び本堂でお勤めをし、そのあとの時間は基本的にWEBビジネスと英語の勉強に費やしています。とくに勉強は、毎日やるようにしています。海外とのやり取りも多いので、寝る時間は深夜を過ぎることも。それでも、朝のお勤めを欠かすことは絶対にありません」(教瑞さん)

聞いただけでハードだが、最高技術責任者であっても「会社に行って仕事をする」ことがマストではない働き方が、両立をしやすくしていることは確かだ。もちろん、銀座のオフィスに通勤する日もあるが、通常週2日程度だという。

さらに、教瑞さんはお坊さん以外の仕事を始めたことで、お坊さんとしての毎日の習慣である朝のお勤めがいかに自分を調えてくれるかに気づいたという。

「朝夕のお勤めで仏様にお仕えするのは僧侶としてもっとも大切な仕事ですが、自分にとっても大きな価値がありました。お寺の仕事以外の時間のほとんどは、今行っているプロジェクトに関する時間で、休日やボーっとする時間はありません。とくに必要としていないというのが正しいでしょうか。そうすると、頭の中にどんどん情報やタスクが溢れてショートしてしまいがちですが、朝のお勤めをすることで、スーッと整理されていくのです。まさに、頭と心が調う、という感覚ですね」

会社は教瑞さんをどう見ているのか。コミックス代表取締役社長の坪内賢太郎さんは、ビジネスマンとしての教瑞さんをこう評価する。

教瑞さんが働く会社の社長は、彼がお坊さんだと知る前から「利他的な人」だと感じていたという(撮影:尾形文繁)

「私が藤井に出会って一緒に仕事をしたいと思ったのは、とても“利他的”な精神を感じたからです。スタートアップの事業は、最初からは収益を生めないケースもあります。それでも、理念をもってチームで作り上げて行く。その中で教瑞さんの利他的な考え方はチームにとって、とても学びになり、財産になりました。ちなみに、じつはお坊さんだと知ったのは、彼と出会って随分後になってから。でもそれを聞いて、妙に納得しましたね」

教瑞さんの場合、お坊さんとビジネスマンの両視点をもつことにデメリットはない――それどころか相乗効果すらあるようだ。

「ビジネスをしていると、いろんな方にお会いする機会があります。その考え方を聞くのは、お坊さんとして貴重な機会でもあります。お寺にいらっしゃる方々が、普段どのように考え、悩みを持っているのかを肌感覚で知ることができるからです。そして、ビジネスをしていると今の社会の経済状況も分かります。すると、法話で話すことも変わってきます。私は、現代社会の問題をテーマにお話するようにしていますが、そこにもビジネスで培った感覚は非常に役立っています」(教瑞さん)

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