かくして、かつては「日本経済が発展した理由」を学んでいた日本研究者たちは、今ではむしろ「課題先進国」としての日本を研究対象とするようになっている。もっとも少子高齢化から通貨の国際化、低成長化まで、今の中国には「日本の過去の経験」が役立ちそうな事例が山ほどある。できれば大いに活かしてほしいのだが、最近の中国シンクタンク業界では「国別研究者」の評価が低い、という事情もあるのだそうで、何だか見ていて申し訳ない気分になってくる。
他方、引退の時期が近づいている古い世代の日本専門家たちは、「1980年代の日中関係はすばらしかったんだけどねえ」などと懐かしげに語る。確かにその頃は「日中友好」の時代であったし、われわれも鷹揚な「お殿様」モードであったのだ。今じゃ中国がGDP(国内総生産)で日本の倍以上になってしまっているけれどもね。
日本は目立たなくなったが、アジアは「百花繚乱」
もっとも、こんな風に考えることもできる。かつて、アジアにおいて日本が孤軍奮闘している時代があった。他の国は永遠に近代化できないんじゃないか、なんてことが真面目に語られたこともあった。実際に1960年代のアジアは、1人当たりの所得ではアフリカよりも貧しいくらいだった。食料も足りていなかった。
それから幾星霜。韓国、台湾、香港、シンガポールという「アジアの虎」が次々に離陸した。ASEAN(東南アジア諸国連合)諸国もそれに続いた。そして中国の改革・開放路線が花開いた。今のアジア経済はまさしく百花繚乱。はるけくも来たりしものかな。ここに至る過程では、日本企業も大いにがんばったのだ。今じゃ日本が目立たないくらいになったけれども、そりゃあ今の方がずっと面白くなっているのではないか。
アジアは人口は多いし、経済発展レベルもまだまだ低い。そして今のところ、欧米で起きているような反グローバル主義とも無縁である。インフラ投資だってまだまだ未整備だ。その気になれば、発展に資する仕事はいくらでもあるはず。あんまり愚痴っぽくなっちゃいけないよね。どれ、虹橋空港へ向かう時間が近づいているようだ。
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