ファッション業界が挑む「年齢差別」との戦い

「歳を重ねる」という言葉は復権できるか?

コロンビア大学エイジングセンターの社会医療科学および心理学アシスタントプロフェッサーのデビット・ワイズ氏はコーエン氏に同調し、一番の課題はアメリカ社会におけるエイジングへの認識を変えることだと語った。ワイズ氏は、研究を通じて年齢からの離脱と呼ばれる拒否感につながる、年を取ることに関して否定的な感情が蔓延していることを発見した。

「人は年を取るにつれて老いを遠ざけようとする。こうした態度が高齢者差別と、誰も年を取りたくないという考え方を維持している。その場合、老いることに肯定的な意味を与えることは難しく、否定的な年齢への偏見に対抗することが難しくなる可能性がある」

ファッションにおけるエイジングの未来

アップルホワイト氏は、ファッションとビューティー業界がエイジングを受け入れることに前向きでない状況は、消費者自身が年を取るという概念を敬遠していることによって存続していると述べた。シワを取り除き、より若く見せるために女性たちに売り込まれる数々の製品に加えて、「年相応の」行動という誤った考え方を促進させる衣服によってこの状況は悪化していると、アップルホワイト氏はいう。

「時折、私のブログで『年配の女性がミニスカートをはいても良いのか?』と質問する人がいる。私は本人が望むものは何でも着て良いと思う。周りの人たちがそれを見て快適でないとしても、それはその人たちの問題だ」と、同氏は語った。

この循環を緩和するには、年配女性へのマーケティングは、気になる部分を小さくしたり目立たなくするということよりも、彼女たちの魅力を見せつけることにもっと焦点を当てるべきだとアップルホワイト氏は述べた。

「年齢差別が収益にさえ勝るというのは、驚くべきことだ」と、アップルホワイト氏は語った。「市場は赤字志向になっている。ウエストラインやヒップラインがはっきりしなくなってしまった人が着用できるゆったりした服だけを提供する。それでは、聴覚を失ったときの補聴器と一緒だ」。

コーエン氏は、適切なマーケティング活動が行われない場合、年配女性たちが束の間のトレンドとしてコモディティ化されはじめ、最終的に年配の消費者たちのさらなる疎外または盲目的な崇拝化に向かうことを心配している。

「私は年配の女性たちがアクセサリーのように扱われ、若い人たちのあいだで身動きがとれない様子を見て残念に思う。焦点を当てるのは、年齢ではない。重要なのは、人々が考えていることを活用するのは、ひとつのトレンドだということだ。私としては、これがあまり進歩しているとはいえない」。

アメリカ社会がエイジングの概念を再考し続けることで変化が起こると、コーエン氏は予想していた。「人は皆、年を取る運命にあることを認識しなければならない。だからエイジングについて話をしたり、会話を生み出したりすることが重要だ。女性たちはありのままの自分でいることに一層勇気づけられ、年齢を隠さなくなる。彼女たちは若い年齢層と年配層のあいだに対話を生み出している。そして、多くの女性が髪の毛が白くなっていくことに抗わない」。

しかし、オシャウネシー氏は、この動きが一時的な成功に留まらないことに希望をもつ。同氏はトムのショーに参加後、あらゆる年齢層の人々から活躍を称えるeメールを受け取った。そのなかには、もう年を取ることを恐れないと伝える若いファンも多く含まれていた。

オシャウネシー氏はいう。「人々が正々堂々と意見を述べることで、このトレンドは前進し続ける。私は年を重ねることに抗っていない。年を取ることを受け入れているのだ」。

Bethany Biron(原文 / 訳:Conyac)

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