フェラーリ「峠仕様の跳ね馬」は何がスゴいか 「カリフォルニアT HS」に乗ってみた

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カリフォルニアT HSと深い信頼関係で結ばれた私は、スロットルペダルをさらに深く踏み込んだ。すると登り勾配にもかかわらず3速でコーナリング中にスタビリティ・コントロールの作動を示す警告灯が点滅した。

3.9リッター・ツインターボのパワーが、最新のハイグリップ・スポーツタイヤを打ち負かそうとしているのだ。しかし、フェラーリのエレクトロニクスはここでも抜群の制御能力を発揮。ピクリともボディを揺らさないうちに、タイヤとエンジンを支配下に置くと、それまでと変わらぬ安定したスタンスでコーナーをクリアしていったのである。

歓迎すべき変化

それにしても、カリフォルニアTのコンバーチブルボディはミシリともいわない。固められたサスペンションからの入力は決して小さくないはずが、そうした衝撃を力強く受け止めて的確に押し返すだけの逞しさをこの流麗なボディは備えている。

この頑丈さがあればこそ、これだけ俊敏で正確なハンドリングが実現できたのだろう。ハンドリング・スペチアーレはクルマのバランスを崩す強引なチューニングではない。スポーツカーの、そしてフェラーリの魅力をさらに輝かせるため、クルマのトータルバランスを考慮して設定されたスペシャル・セッティングなのである。

フロントエンジンらしい穏やかなコーナリング特性も、ドライバーを勇気づけるのに大きく役立っている。先日、試乗した488スパイダーもそうだったが、最近のフェラーリは過激なステアリング反応をもってスポーティさを演出するよりも、人間の感性に寄り添った設定で、むしろドライバーを鼓舞する方向に様変わりしたように思える。無論、これは歓迎すべき変化だ。

だから、どれほど走っても走り疲れるということがない。キャビンに進入してくる空気は相変わらず冷ややかだったが、それでもルーフを開け放ったまま、私はカリフォルニアT HSとともに箱根の山々を走り続けた。

(文:大谷達也/写真:河野マルオ)

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