あなたの「読書」にセンスはあるか? カリスマ編集者と経営学者、「読書」を語り尽くす(上)

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 ネットメディアの浸透、電子書籍の普及などで、変わりつつある読書のかたち。ネット時代における読書の意義とは何か? 読書によってどんな能力が培われるのか? 読書好きの経営学者、楠木建一橋大学大学院教授と、『ドラゴン桜』『宇宙兄弟』などのヒットを生んだ、カリスマ漫画編集者、佐渡島庸平コルク社長。ともに幼少期を南アフリカで過ごした2人が、読書について語り尽くす。

南アにはテレビもなく、読書ざんまい

楠木:僕と佐渡島さんには南アフリカで子ども時代を過ごしたという共通項があって、2人とも本が好き。南アつながりで本の話をしようという、わかるような、わからないような企画です(笑)。南アフリカからの帰国子女は珍しいですよね。

佐渡島:あんまり会いませんけど、何かにつけて「この人、南アに行ってたんだよ」と話題にされたりするから、意外と知っていますよ。

楠木:佐渡島さんがいらした時期が1990年代で、僕がいた時期は1960年代から70年代。ヨハネスブルグで通っていた日本人学校も一緒ですね。お父様のお仕事の関係ですか。

佐渡島:父が三井物産だったので、中学1年から3年生まで、あちらで過ごしました。

楠木:そうですか。僕の父は機械部品メーカーで働いていまして、いたのは小学校まで。60年代の辺境地にいる日本人というのは、企業から来たグローバル二等兵みたいな人たちばっかり。30歳前後の社員が、「何かあるらしいから行ってきな!」くらいのノリで派遣された人が多かったのではないかと思います。父も支社長でしたけれど、支社にいるのは支社長ひとりだけ。まだエレクトロ二クス産業が強くない頃ですから、商社とか機械業界の人たちが家族を連れて商売のフロンティアを開拓していた。

当時の三井物産は日本人コミュニティの中心で、日本人コミュニティのまとめ役みたいな感じ。僕はまだ小さくてよくわかっていなかったのですが、物産の大人っぽくてかっこいい黒い社用手帳をもらうと大喜びして、「なんだかわからないけど三井物産は日本の代表だ」という理解を持っていました(笑)。

佐渡島:僕の頃は会社も増えていましたね。でも、会社が中心の社会で、子どもたちもみんな会社の名前で呼ばれていましたね。僕のような子どもでも、「物産の佐渡島」と呼ばれるわけです。日本人学校は小中合わせた全校生徒が50人ぐらいでした。

楠木:そうですか。僕らの頃は全校で20人もいなかったのではないかと思います。年齢もまちまちで、普通の授業は成立しない。とにかく昼間集まって、一人ひとりがわりと勝手なことをやっている。寺子屋かモンテッソーリ教育みたいなものです。佐渡島さんのときはもう、テレビの放送もございましたでしょう?

佐渡島:ありました。

楠木:僕のいたころの南アは、ヨハネスブルクでもテレビ放送がなかった。ラジオはありましたけれど、子どもで日本語というと本の占める割合が本当に大きくて。祖母が船便で送ってくれる本を、繰り返し読んでいました。物流もスムーズではなくて、数少ない本は貴重でしたね。好きだったのは『エルマーの冒険』から始まって、ルパンや明智小五郎といったシリーズ物。ポプラ社のハードカバーも気に入っていました。

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