大串:(もし政権を取ったとしても)共産党と連立はしません。基本理念や政策が違うからです。民主党政権時代の弱点の1つは党の基本理念をうたった綱領がないことでしたが2013年につくりましたし、昨年3月の民進党結成に当たっては、発展させる形で新しい綱領をつくりました。民進党は「『生活者』『納税者』『消費者』『働く者』の立場に立つ。未来・次世代への責任を果たし、既得権や癒着の構造と闘う、国民とともに進む改革政党である」という位置づけを明確にしています。
そのうえで、安倍政権の独走を阻止し、選挙に勝つためにはシンプルな対抗軸をつくることが必要です。まずは民進党の政策と一致するところから、他の政党との連携を考えていくということであって、(共産党に基本政策を譲歩しているなどの批判は当たらず)、私たちの政策は一貫しています。
有馬:2009年に民主党は共産党以外の「反自民勢力」を結集して政権を取りましたが、その後、考え方の違いから社会民主党との連立を解消するなど「バラバラ感」が否めませんでした。今回も党内で「左右対立」があるなら、考え方の違う方々とはお互いにいったん分かれて、別々になったほうがすっきりするのでは?
大串:本来、政党にはいろいろな意見を持つ人がいていいはずですし、民進党は自由闊達に意見が言える政党で、そこが今の自民党とはまったく違います。しかし、民主党時代には国民から見てバラバラ感があったことは否めません。
いま、政調(政務調査会)の責任者としての私の役割は、そうした反省のうえに立って「議論を重ね、熟議を尽くして党の方向性を出す。決まったうえは、組織として一致して動く民進党にする」ということです。実際、安保法制関連法案などへの対応では、熟議を尽くし対案を示したうえで、一致して政府の法案に反対するなどの行動をとっています。バラバラだった民主党時代とは変わってきています。
安倍首相は「抱きつき戦略」をとっている
有馬:では、主要な政策についてお聞きします。少子高齢化、人口減少など日本の課題は明らかで、打つ手もおのずと限られています。民進党と自民党の経済政策では、根本的にどこが違うのでしょうか。
大串:自民党は「大都市や大企業が強くなれば、地方も中小企業もその『おこぼれ』の恩恵を受ける」という「トップダウン型」のモデルを政策として採用しています。これは高度成長時代の古いモデルです。
一方、私たちの政策は「ボトムアップ型」です。なぜいつまで経っても消費は盛り上がらず、景気がよくなったという実感を得られないのでしょうか。ごく普通の給与生活者など「中間層」が細っているからです。細った中間層を増やすにはどうすればいいのでしょうか。民進党の答えは「人への投資」です。いちばんの目玉として打ち出している政策は「就学前から大学教育までの無償化」です。この「教育の無償化」には最大で約5兆円かかります。これからの若い世代が安心して家庭を持ったり、子育て世代がそれなりの消費ができるようにするには、人への投資が欠かせないのです。
民主党政権時代には財源の裏付けが弱く、高校の無償化までは実現しましたが、実現できない政策もありました。ここは大いに反省しなければなりません。今回は違います。消費税を8%から10%に上げる際、「2%の半分」である1%分、約3兆円弱を教育投資へ使おうという政策です。この3兆円弱に所得、資産課税の見直しによる財源も加えながら、段階的にではありますが、安倍政権とは異次元の規模で、「教育の無償化」を目指します。
「バラまきだ」との批判は的外れです。なぜなら2014年に2つの国際機関OECD(経済協力開発機構)やIMF(国際通貨基金)が別々に出したリポートでも明らかなように、分配政策を上手に行った先進国のほうが、格差が減り、経済成長率も高かったという結果が出ているのです。それまでは、安倍政権が行っている「トップダウンの成長戦略」を実行している先進国も多かったのですが、今ではこうした政策は時代遅れになってきているのです。
最近、安倍政権が「賃金の引き上げ実施要請」「働き方改革」などを言い出しているのは、安倍首相がその流れに気づき始めたからでしょう。私たちの政策に乗っかる「抱きつき戦略」を取り始めているのです。しかし、自民党は民進党の政策をまねした形で大学での「給付型奨学金制度」を創設しましたが、使われる予算はわずか200億円です。「バラまき阻止」を1つの理由にしていますが、考え方がまったく違いますし、これでは格差は縮まりません。
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