民進大串氏「安倍首相の抱きつき戦略は姑息」 財源裏付けある「人への投資」を地道に訴える

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有馬:憲法改正や原子力発電、カジノの3つの政策についてもお聞きします。というのも、この3つは世論調査でも反対が多く、国民の支持を得ているとは言えないからです。民進党は憲法改正で本当にまとまれるのですか?

大串:まず憲法改正の議論ですが、まず自民党の憲法改正は、同党が野党時代の2012年4月に作った日本国憲法改正草案が基になっていますが、これは「憲法に従って政治権力が行使されるべき」「国民が憲法で政治権力を縛る」という立憲主義とはまったく相いれないものです。その点で、真の立憲主義を掲げる民進党の方針とはまったく違っており、受け入れることができません。

一方で、憲法の個々の条項について、国民の合意が形成できるなら、真摯な憲法論議を深めていくべきだと思います。

2030年代原発ゼロは自民党より「はるかに現実的」

有馬 晴海(ありま はるみ)/政治評論家。1958年、長崎県佐世保市生まれ。立教大学経済学部卒。リクルート社勤務などを経て、国会議員秘書となる。1996年より評論家として独立、政界に豊富な人脈を持ち、長年にわたる永田町取材の経験に基づく、優れた分析力と歯切れのよさには定評。政策立案能力のある国会議員と意見交換しながら政治問題に取り組む一方、政治の勉強会「隗始(かいし)塾」を主宰、国民にわかりやすい政治を実践(撮影:梅谷秀司)

有馬:原発はどうですか? 蓮舫代表は「2030年代までに原発全廃」だった党の目標を「2030年に全廃」と前倒しにしようと意欲を見せていましたが、最大の支援組織である連合との関係が一時ぎくしゃくして、事実上断念しました。

大串:「2030年代に原発ゼロ目標」は民主党政権時の「革新的エネルギー環境戦略」の一環として、いろいろな意見をまとめてできたものです。私が民主党の担当政務官だったこともあり、細かい経緯も知っているつもりですが、この「戦略」は、青森県等の立地県や、関連業界で働く方々、あるいは米国等とも連携をとりながら、熟議のうえ取りまとめたものなどを含めて、同意を得ているものです。方向性が出ていることには、何ら変わりはありません。

一方の自民党はどうでしょうか。同党の2030年のエネルギー政策では、総エネルギーに占める原発の比率が依然20~22%を占める計画になっています。しかし、使用済み核燃料の最終処分場をどうするのか、核燃料サイクルはどうするのか、自民党はあいまいにしたまま、民進党の政策を批判しています。これは不誠実です。

またカジノについては、2つの理由から反対しました。1つは「違法性阻却事由」です。つまり、本来ならカジノは「賭博罪」に問われ違法なわけですが、カジノを認めるならば、その違法性を否定する明確な理由が必要なのです。しかし自民党はその理由を明らかにしていません。もう1つは、ギャンブル依存症対策です。この対策もはっきりうたっていません。そのほかにも経済効果が検証されていないなどの理由があります。「民進党にはカジノの設立に原則として賛成の議員もいる。採決ではバラバラになる」と予測した人もいましたが、事前にこうした熟議を尽くしたので、民進党は一致して反対に回りました。むしろ与党の公明党がバラバラの対応だったのは、ご承知のとおりです。

有馬:安倍政権が打ち出している政策についてはすべてがダメというものではないにせよ、必ずしも国民が賛成しているわけではありません。閣僚や政務官などの失言も目立ちます。それでも安倍内閣の支持率は高位で安定しています。民進党の支持率は一向に増えません。民進党が有権者の心をつかめないのは、結局蓮舫代表の責任ですか?

大串:これは民主党が2009年から2012年まで政権を担った3年3カ月間における失敗が大きいと思います。失敗を払拭するのには長い道のりが必要かもしれません。「党名を変えたら?」とか「解党して出直したら?」という人がいますが、古い殻を便宜的に脱ぎ捨てても国民の皆さんには見すかされると思います。党勢を回復するには、魔法の杖などありません。血のにじむ努力をして、国民の皆さんに真摯に向き合って、法案や政策作りに汗を流し、実績を積んでいきます。それしかありません。

【有馬の目】「人材も政策もあるがないのは信頼だけ」、とは蓮舫民進党代表。「信頼回復の要諦は政策」と引き受けた大串政調会長。全員野球ができる政策を絞り出すことができるのか、大串政調会長にウエイトがかかる。

(構成:福井 純)

有馬 晴海 政治評論家

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ありま はるみ

1958年 長崎県佐世保市生まれ。立教大学経済学部卒業。リクルート社勤務などを経て、国会議員秘書となる。1996年より評論家として独立し、テレビ、新聞、雑誌等での政治評論を中心に講演活動を行う。政界に豊富な人脈を持ち、長年にわたる永田町取材の経験に基づく、優れた分析力と歯切れのよさには定評がある。ポスト小泉レースで用いられた造語「麻垣康三」の発案者。政策立案能力のある国会議員と意見交換しながら政治問題に取り組む一方で、政治の勉強会「隗始(かいし)塾」を主宰し、国民にわかりやすい政治を実践している。主な著書に「有馬理論」(双葉社)、「日本一早い平成史(1989~2009)」(共著・ゴマブックス)「永田町のNewパワーランキング100」(薫風社)、「政治家の禊(みそぎ)」(近代文芸社)など。

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