有馬:憲法改正や原子力発電、カジノの3つの政策についてもお聞きします。というのも、この3つは世論調査でも反対が多く、国民の支持を得ているとは言えないからです。民進党は憲法改正で本当にまとまれるのですか?
大串:まず憲法改正の議論ですが、まず自民党の憲法改正は、同党が野党時代の2012年4月に作った日本国憲法改正草案が基になっていますが、これは「憲法に従って政治権力が行使されるべき」「国民が憲法で政治権力を縛る」という立憲主義とはまったく相いれないものです。その点で、真の立憲主義を掲げる民進党の方針とはまったく違っており、受け入れることができません。
一方で、憲法の個々の条項について、国民の合意が形成できるなら、真摯な憲法論議を深めていくべきだと思います。
2030年代原発ゼロは自民党より「はるかに現実的」
有馬:原発はどうですか? 蓮舫代表は「2030年代までに原発全廃」だった党の目標を「2030年に全廃」と前倒しにしようと意欲を見せていましたが、最大の支援組織である連合との関係が一時ぎくしゃくして、事実上断念しました。
大串:「2030年代に原発ゼロ目標」は民主党政権時の「革新的エネルギー環境戦略」の一環として、いろいろな意見をまとめてできたものです。私が民主党の担当政務官だったこともあり、細かい経緯も知っているつもりですが、この「戦略」は、青森県等の立地県や、関連業界で働く方々、あるいは米国等とも連携をとりながら、熟議のうえ取りまとめたものなどを含めて、同意を得ているものです。方向性が出ていることには、何ら変わりはありません。
一方の自民党はどうでしょうか。同党の2030年のエネルギー政策では、総エネルギーに占める原発の比率が依然20~22%を占める計画になっています。しかし、使用済み核燃料の最終処分場をどうするのか、核燃料サイクルはどうするのか、自民党はあいまいにしたまま、民進党の政策を批判しています。これは不誠実です。
またカジノについては、2つの理由から反対しました。1つは「違法性阻却事由」です。つまり、本来ならカジノは「賭博罪」に問われ違法なわけですが、カジノを認めるならば、その違法性を否定する明確な理由が必要なのです。しかし自民党はその理由を明らかにしていません。もう1つは、ギャンブル依存症対策です。この対策もはっきりうたっていません。そのほかにも経済効果が検証されていないなどの理由があります。「民進党にはカジノの設立に原則として賛成の議員もいる。採決ではバラバラになる」と予測した人もいましたが、事前にこうした熟議を尽くしたので、民進党は一致して反対に回りました。むしろ与党の公明党がバラバラの対応だったのは、ご承知のとおりです。
有馬:安倍政権が打ち出している政策についてはすべてがダメというものではないにせよ、必ずしも国民が賛成しているわけではありません。閣僚や政務官などの失言も目立ちます。それでも安倍内閣の支持率は高位で安定しています。民進党の支持率は一向に増えません。民進党が有権者の心をつかめないのは、結局蓮舫代表の責任ですか?
大串:これは民主党が2009年から2012年まで政権を担った3年3カ月間における失敗が大きいと思います。失敗を払拭するのには長い道のりが必要かもしれません。「党名を変えたら?」とか「解党して出直したら?」という人がいますが、古い殻を便宜的に脱ぎ捨てても国民の皆さんには見すかされると思います。党勢を回復するには、魔法の杖などありません。血のにじむ努力をして、国民の皆さんに真摯に向き合って、法案や政策作りに汗を流し、実績を積んでいきます。それしかありません。
(構成:福井 純)
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