中国の40代女性が「2人目」を今こそ産む理由 「一人っ子政策終了」で見えた世代間ギャップ

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それなのに今までは、国の政策で子どもを1人しか持てない状況だった。しかし、実際には40代以上の中国人の場合、自分の生まれ育った環境と比べて「自分の子どもにも兄弟姉妹がいたらいいのに」という思いをずっと持ち続けてきた人が多くいる。一人っ子の子どもを、兄弟や姉妹のいる自分と比べた場合に「寂しそう」「将来、1人だと困らないかしら?」と不安に感じてしまうのだ。それが、2人目の出産も気兼ねなくできるようになったならば、願ったりかなったりだ。家族の人数も「福」も増え、子どもに自分と同じように兄弟姉妹を持たせられる。

「多子多福」のほかにも、40代以上の親の行動に影響している伝統思想がある。「養児防老(老後の面倒を見てもらうように、子ども、特に息子を育てる)」という考えだ。昔の中国、とりわけ農村地域では、社会保障制度や高齢者看護の受け皿が整備されていなかったため、子孫がいなければ、労働能力を喪失した老人の面倒を見てくれる人はいなかった。

つまり、子どもを産まないと、将来自分を介護し、看取ってくれる人がいないということである。また、子ども全員が必ずしも親思いに育つとは限らないし、親孝行できる経済能力を持つわけでもない。したがって、子どもが1人では心もとないために、数人の子どもを産み、その中の1人だけでも自分の老後を支えてくれたら安心だという考えだった。

実際に現在の中国では、一人っ子に先立たれた「失独老人」(一人っ子を失った老人という意味)は喪失感にさいなまれるばかりか、経済的な問題も抱えて社会問題になっている。そうはなりたくないと思えば、もう1人子どもが欲しくなるという構図がある。

中国の「世代間ギャップ」は大きい

中国では30代半ば以下の世代に比べて、その親の世代は圧倒的に経済的な余裕がある。若者の世帯には第2子を産むどころか、不動産価格の高騰などによる経済的な厳しさから、結婚さえ躊躇するカップルも多い。共働きで少しでも豊かになろうと、夫婦ともにキャリアを追及すれば、子育てには時間を割けない。それに引き換え、子どもが巣立った40代以上の親世代夫婦は、不動産に加えて貯金もあり、不妊治療も子育てもできる経済的な余裕がある。

親世代は、政治運動が重視された時代に育てられた。そのために趣味や余暇を楽しむこともなく、結婚してからも、共働きの中で、仕事と家事に手いっぱいだった。しかし、子どもが巣立ったらやることがなくなってしまい、急に手持ちぶさたになってしまった。ではどうしようかと考えたときに、趣味を持たずに生きてきた人が多い世代が考えるのが、「まだ間に合う」ともう1人子どもを産むことなのだ。

こうした親世代の考えや価値観を、1980年代以降生まれの世代は多くの場合、理解できず、戸惑いや反対の声を上げる若者もいる。ネットを見ると、次のような投稿が散見された。

「私は今妊娠3カ月だけれど、49歳の母はなんと不妊治療を受けている。もし子どもができたら、自分の2人目の子が孫と同じ年齢になって変だと思わないかな」「親が体外受精して、今年弟が生まれた。弟が20歳になるときに親は70代。自分は弟の親代わりにはなりたくない。私の将来が混乱する可能性について両親は、考えてくれたのだろうか……」

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