とにかく、米国は偏った貿易関係によって損なわれた米国の雇用と産業を守るためには、2国間交渉によって不均衡是正を図るべきという考え方だ。特に中国とは2国間交渉を貫いていく構えで、その姿勢は日本に対しても示されるはずだ。
この6月にロス商務長官は日本の世耕弘成経済産業相とワシントンで会談する予定だが、その場で日本に対して2国間の通商協定交渉の検討を求める可能性もある。
結果的にジャパンバッシングになる
ロス長官は全米有数の投資家、大富豪として著名であり、トランプ大統領にとっては大の恩人でもある。トランプ氏は、一時、破産に瀕(ひん)したときがある。そのとき、手を差し伸べて救ってくれたのがロス氏だった。
そんなロス氏はもともとTPP推進派だったが、いまではトランプ氏が主張する米国の雇用拡大、産業保護を優先する2国間交渉をベースにした通商政策を支持している。
特に日本に対しては、その実情を熟知しているだけに、同盟国トップの最優等生にふさわしい交渉相手として、最高に厳しい基準で立ち向かってくる可能性がある。それは、結果的にジャパンバッシングになる。
いまトランプ政権にとって最大の政治課題は北朝鮮の処遇だ。その厄介な処遇について、あたかも火中の栗を拾わせるかのように、中国に対してかなり難しい協力を求めている。2国間交渉でこれだけ厳しい条件を中国に、政治的圧力として、課している以上、同盟国の日本にもまた、対中国と異なる日米貿易摩擦という文脈で、それなりに厳しい基準で交渉に臨もうとしても不思議ではない。日本としても、それくらいの覚悟はしておくべきだろう。
これまでトランプ大統領に対する評価は、行き当たりばったりのパフォーマンスとか、一貫性のない政治・外交オンチとか、それこそ踏んだり蹴ったりだった。特にハリウッドはじめ西海岸のメディアの“アンチトランプ”ぶりはすさまじかった。
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