傷に塩を擦り込む、余計なひと言
ゴルフをよく知らない素朴な若者たちは、見たままをそのまま口にしてしまいます。たとえば私が下りのパットを2メートルオーバーさせたとすると、ご親切に「太大了(タイダーラ)!」(強すぎる!)と叫んでくれます。しかし、本人は打った瞬間に強すぎたことは感触でわかっていますし、返しの長いパットを残して十分ショックを受けているのですから、今さらキャディーに「強すぎる!」と追い打ちをかけられるのは、ごめん被ります。
日本のキャディーなら、余計なことは言わずに黙ってすぐ次のパッティングラインを読んでくれるものですが、そうした心遣いは存在しません。ショットが池に入れば「下水了(シャーシュイラ)!」、大きくフックさせれば「太左了(タイゾウラ)!」。「わかってますって、そんなこと!」と言い返したい気分になります。
それはルール違反だ!
ちょっと前までは、ティーアップをキャディーにやらせる老板がいました。自分が打ちやすいよう球の高さを調節するティーアップを、他人にやらせる神経がまったく理解できません。また、グリーン上で、客が狙ったラインへ向けて構えているパターのヘッドの向きを調整してくれるキャディーもいます。もちろんルール違反ですが。
究極の顧客サービス、「スコア改ざん」
中国老板は、自分でスコアカードをつけません。それはキャディーの仕事です。私はもちろんグローバル式で、毎ホール終了後、自分で記入します。
この習慣の違いに端を発する事件が起きたのは、私がとあるコンペに参加したときでした。その日の調子はまあまあで、前半は45で回ってきました。ところがよくあることですが後半の出だしでいきなり、ダボ(2オーバー)、トリ(3オーバー)をたたき、軽くキレてしまいました。そしてこれがいけなかったのですが、次のホールからスコア記入をキャディー任せにしてしまいました。その後もグダグダのゴルフが続き、18番ホールが終わって同伴競技者と握手、上位入賞もありえないし、スコアなどどうでもよいと思いながらクラブハウスに戻ろうとすると、うら若きキャディーがニコニコしながらスコアカードを渡してくれます。そこには「前半45、後半40、トータル85」と記入されていました。
小心者の私はドキッとしました。中国では残念ながらスコアをごまかす人がいるのは知っていましたが、キャディーがグルだったとは。しかも、どう考えても50以上はたたいている私の後半9ホールのスコアが何で「40」になっているんだ? 85だったら下手したらそこそこ上位に入って賞品までもらえてしまうではないか! 私はあわてて後半各ホールのスコアを懸命に思い出して数字を修正しました。たぶん52か53のはずですが、安全を見て54として、トータル99でスコアカードを提出、順位は下位に沈み、事なきを得ました。キャディーは客に喜んでもらおうとサービスしたつもりでしょうが、これはやり過ぎです。
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