中国ブランドには、何が足りないのか? 「カンヌ」グランプリ作品に見るブランド戦略

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 日本の製品は、高い品質を誇りながら、中国マーケットにうまく食い込めていない。その最大の理由は、ブランド戦略の甘さにある。この連載では、北京電通に7年駐在し、グローバル企業のブランド戦略のコンサルティングを手掛ける著者が、中国人の心を掴むためのブランド創りを解説。教科書的なブランド論ではなく、ビジネスの現場で起きている事実をベースに、実践的なブランド戦略を発信する。
今年で60回目を迎えたカンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバル(写真:AP/アフロ)

「有名な名前」イコール「ブランド」ではない

7月、2013年度「FORTUNE GLOBAL 500」企業が発表されました。国別の内訳を見ると、アメリカ132社(前年から増減なし)、中国89社(+16)、日本62社(-6)で、中国企業の躍進と日本企業の没落傾向というお決まりのシナリオとなっています。

特に最新ランキングでは4位に中国石化、5位に中国石油、7位に国家电网と国営企業3社がランクインしたので、中国人の自尊心は大いに満たされたことと思います。これらは確かに巨大企業ではありますが、しかし、「大きい」とか「名前が知られている」だけでは価値あるブランドにはなりえません。

グローバルブランドになるためには各国・各市場での事業の成功が不可欠で、その意味では世界市場をカバーするだけの事業規模の大きさが必要です。実際、中国政府管轄下の国営企業は利益の38%を海外市場から得ており、この比率を5年以内に50%にするのが国家目標だそうです(China Daily7月30日付による)。

しかし、事業規模や収益力のベースのうえに、その企業や事業が人々にもたらす価値や社会の発展に貢献するビジョンが信憑性を持って実感されないと、ブランドとしての魅力は出来上がってきません。

一方、中国の民間企業に目を向けると、グローバル市場でも「ブランド」として認知され始めている企業や事業があります。たとえばレノボ、青島ビール、ハイアール、フアウェイ、アリババ、エアチャイナなどは、ビジネスのグローバル展開に伴って、ブランドの個性や商品/サービスの価値が世界に少しずつ浸透中です。

中国に限らず経済発展途上の市場では、「大きいこと」「有名であること」が「ブランドであること」と同義になります。有名でよく売れている商品なら信頼できるが、聞いたことのない企業や商品にはだまされるかもしれない。だから少々値段が高くても聞いたことのある名前の商品を買う、という理屈です。

この段階では、ブランドはマーケティングの関数であり、「ブランド力がある=その商品がよく売れる、高く売れる、長期的に売れる」ことを意味します。しかし、社会が成熟し人々の理想や要求が高度になってくると、ブランドに期待される役割はさらに拡大していきます。

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